シャルル・ミュンシュの芸術2007/08/31 13:06


「シャルル・ミュンシュの芸術28 ショーソン交響曲変ロ長調&詩曲 ダンディ・フランス山人の歌による交響曲」(RCA RED SEAL)

 タイトルのショーソンよりも「ダンディのフランス山人の歌による交響曲」を聞くべきだ。特に第3楽章(活発に)でこれだけの表現を出来るミュンシュの指揮者としての才能に驚かされる。ピアノのシュバイツァーの演奏も技巧的に素晴らしく暖かい表現を兼ね備えている。
 ミュンシュのボストン交響楽団の音色は、特に弦楽器の音に特色がある。小澤征爾が音楽監督を務めていた時代も暖かみがあるヨーロピアンサウンドであったが、何やらサイトウ記念オーケストラに似通った生ぬるさが感じられるのに対してミュンシュ時代のボストン響のヴァイオリンは、どちらかと言うとブルートーンで輪郭がクッキリとしかも涼しく、ピュアな音色である。
 1950年代末期のアナログ録音と言う事もあるが、現代的なギスギスした響きとは違う、カンタービレの表現が光っている。
 音の輪郭やソノリティに変化が自由に与えられ、フルトヴェングラーの様な自由な速度の変化がフランス音楽の独特の感興を醸し出している。
 ダンディの交響曲のLPを大事に聞いて来たが、ジャケットもボロボロになってしまって、この様なマイナーな曲は二度とCD化されないと思っていたら、コンパクトディスク発売25年目にして、ようやくCD化された。
 ショーソンの交響曲も立派な表現であるが、今ひとつ面白くない。詩曲は、モノラル録音とあるが、実際には、左右の位相に差があるので、ステレオ収録の実験期の録音だろう。ダビッド・オイストラフの演奏は、実に情熱的であり、後半の哀しく神秘的な歌には大きな感銘を受けた。
 しかし、「詩曲」の演奏としては、1928年に録音されたジョルジュ・エネスコの演奏にかなうものはないだろう。SP時代の録音も初期のものであり、音は貧しいが、この曲が作曲された時代の雰囲気を見事に伝えている。

 RCAのミュンシュの録音は一部は、リビングプレゼンスシリーズのSCDとのハイブリッドCDやVICTORからオーディオマニア向けのCDが発売されているが、今回の録音は、ステレオ初期の録音にもかかわらず、無理にノイズを除く等の加工もされていないので、私の真空管オーディオシステムでは、マスターテープを聴いている様に楽しく聴けた。