観音菩薩に惹かれる2008/08/15 21:10

仏像にみられる各種の印である。
 奈良国立博物館で開催されている「西国三十三箇所観音霊場の祈りと美」の展示を見に行った。  実に日本における観音信仰のあり方を俯瞰する充実した内容の展示であったが、展示の趣旨を完全に理解し得た参観者がどれだけいただろう。  最近の国立博物館の展示は、非常に内容が高度になっていて専門家をも納得させる内容であるが、一般人民にとっては、難し過ぎるのではないだろうか。  観音や薬師ほど、古代から庶民に信仰された仏様はいない。だから、現在でも庶民にPRされる展示でなければ、ならないと思う。  第1章のほとけ 観音の道は、飛鳥時代の金銅仏等から十一面神呪心経の様な呪詛を含めた観音の姿であり、これは、6~7世紀から8世紀後半から9世紀前半の段階。  古代信仰が神仏習合を伴って薬師如来と同様に観音信仰が地域に根づいていった段階である。一乗寺の観音菩薩立像のような霊木化現の姿を示しているのもある。更に初期の密教との結びつきを感じさせられるものも。  第2章の霊場の成り立ちと信仰は、平安時代以降、各地の観音菩薩縁の寺院が建築される。性空上人の活躍や粉河寺、長谷寺、壷坂観音、清水寺等の縁起由来や絵巻類の展示も行われる。観音信仰の庶民化と、その信仰の場である寺院が興隆していった時代を中心に示している。  第3章の秘宝では、これらの霊場の曼荼羅や絵画化された観音菩薩等が中心となっている。  第4章法華経では、観音菩薩と法華経との結びつきについての展示が中心で経典類が多い。  第5章では、第2章で取りあげた霊場の成り立ちの中で、霊験記と感得仏の役割が中心となってくる。特に前半の時代は、十一面神呪心経との関わりから十一面観音が中心であるが、平安時代後期からは、特に千手観音の比重が重くなってくる。 第6章  古代から中世への時代は、観音信仰が浄土信仰に結びついていった時代である。特に補陀落山と観音菩薩への信仰が中心となり、観音来迎図が多く描かれている。  第7章の巡礼では、近世以降に活発化した霊場巡り、巡礼にまつわる展示が行われている。  私の感想としては、展示されている文献資料が難しすぎて、私の実力では、経典を含めて半分程度しか理解出来なかった。せめて、翻刻された資料を併置して示して欲しかった。  観音菩薩の姿としては、秘仏が一部展示されている等、滅多に見られないものばかりである。それでも、やはり、飛鳥、白鳳時代の金銅仏が最も好きであり、後は十一面観音の中で惹かれるものがあった。千手観音は私にとっては守り本尊であるが、何やらグロテスクな感じがし過ぎる。  観音菩薩といえば、常設展示の飛鳥時代の少女の様子を写した小型の金銅仏がもっとも愛着を覚える。実に可愛らしい姿をしている。