CDの音が悪い理由2008/11/07 09:28

PENTAXDLで撮影
「CDプレイヤーの音が悪い。」という論議は、1990年代の初めには、行われており、それから殆ど進展をみないまま20年近く経過する内に、ほぼステレオLPレコードが音楽メディアの中心を占めた期間に匹敵するだけの時間が流れている。
 その後、殆どCDの再生フォーマットは、変わらずにI-Podの様な圧縮タイプの携帯音楽プレイヤー中心の時代となっている。
 「CDの音が悪い理由」としては、従来から、DA(アナログ→デジタル)コンバートの段階で生じるという説が有力で、その理由として、
①サンプリング周波数の上限である20Khz以上をカットしているから。
②DA変換時の量子化ノイズの影響。
③ピックアップ時のエラーやジッターの影響
の3点が指摘されて来た。
①については、例えば、高音域をカットしているLPレコードのイコライザーやあるいは、最近では、MP3等やMDのLPモード等の圧縮フォーマットが挙げられるが、これで、実際に高音域がカットされているからといって音が特に悪くなったと感じることはない。
②量子化ノイズが悪いとすれば、音楽のみならず、映像、デジカメの写真全てのデジタルメディアの質が劣化しているというが、実際に量子化補正が行われているものとそうでないものと比べて素人には、殆どその違いは分からない。
③ジッター補正のやり方としては、様々なやり方あるし、クロック周波数を揃えるといった方法もあるが、音の違いは判らない。
 これらから、以上の3つの理由はどれも当て嵌まり難いことになる。

 これらの理由から、私は次の様な考え方を持っている。
「CDの音質劣化要因は、DAコンバーターではなくて後段の回路にある。」


CDの信号は、次の順序でアナログ信号化される。
①信号読み取り→信号補正→DA変換→ローパスフィルター→ライン(アナログ)信号
 私は、この中でローパスフィルターがくせ者だと思っている。ローパスフィルターは、DA変換の際に生じたというか、元々の読み取り信号の中に残っている人間の可聴域以上の信号を強力に除去する回路である。この回路は、レコードのイコライザー等と同様のCR回路であるが、その数十倍の威力を持っている。高級製品では、数段もこの回路が構成されており、その回路を透過した信号に更に、波形補正の信号加工を行っている。
 ローパスフィルターの回路は、最近では、オペアンプであり、ディスクリート(1つ1つの部品を組み立てた)ものではない。回路形式は、NFB(ネガティブフィードバック)方式である。
 この回路がCDの音を「殺して」いるのだと思う。特にNFBは、負帰還補正であるが、高級なものでも周波数毎の位相の違いに完全に対応していない。原信号に匹敵する強さの逆波形を干渉させることが不必要な音を消し去る仕組みであるが、抗ガン剤と一緒でもともとの信号の健全性も阻害する。 
 私は、レコードのイコライザーも自作しているが、NFBは避けて、CR方式を採用している。この場合は、能率が悪いが、位相の狂いが少なくと済むというメリットがある。更に半導体回路では、透過性が悪い(電子の速度が遅い)ので管球(真空管式)を採用している。真空管式の場合は、透過性が良いので、レコード等の微細信号をうまく再現出来る。

 現在、アナログレコード(LPレコード)ブームとなっているが、NFBの半導体式のイコライザー(レコード再生用アンプシステム)は、CDよりも音が悪いと感じる場合が多い。特にMCカートリッジの場合は増幅段数が多いので余計にその様に感じる。

 さて、写真は、真空管式CDプレイヤーでEKJAPANという会社のキットを組み立ててものであるが、なかなか音は良い。CDモジュール部を分解してみた。
http://www.asahi-net.or.jp/~ZZ2T-FRY/cdp.htm
 その結果、DAコンバータから出た直後の信号をそのまま真空管増幅回路に導いていることが判る。つまり、ローパスフィルターを通していないか出来るだけ簡素化して、そのまま透過性の良いアナログ回路によってライン信号に変換しているのである。
 この信号を拡大してみると、やはり、原信号に含まれるノイズがある程度、残留していることが判る。これ自体はマイナス要因だが、高級なCDプレイヤーに比べて音が生き生きと再生されるのである。
 最近まで、このキットは何回もバージョンアップして発売されているが、現在は、発売中止となっているようだ。これは、中国製のポータブルCDプレイヤーのピックアップユニットをそのまま流用しているが、ポータブルCDプレイヤーの生産台数が激減した為に中国製のユニットが入手難となっている為。
 それにしても真空管CDプレイヤーと真空管アンプとの組合せは絶妙である。

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