「デザインの退化=ソビエト化」の始まりをゾルキーCにみる ― 2008/12/11 23:05
写真の一番左の上側のカメラがゾルキーC(エス)である。その下は、ゾルキーⅠ(後期型・勝手に分類している。)
ソビエトのゾルキーシリーズは、フェドⅠ型と同様にライカⅡ型をベースにソビエトナイズされたカメラで、ゾルキーⅠは、ライカⅡ型の原形をほぼ忠実に追っている。
フォーカルプレインシャッターや機構部は、ほぼ完全にライカを再現しているが、さすがにあのロシア人の無骨な腕やぶっとい指なんかを思い浮かべれば良いと思うが、おおざっぱな面もあり、工作の精度は出ていない。
日本のカメラ修理工も、ソビエト(ロシア)カメラは、カメラではないと修理を断る人も未だにいる位。
ゾルキーCは、下のゾルキーⅠに比べて軍幹部(上の銀色の部分)が上に伸び上がっている。
なにやら「ゆるキャラ」風のデザインの変更である。また、軍幹部の段差がなくなって、加工がやりやすくなる様に工夫されている。
つまり、ソビエト共産主義の工業原理(大衆に安価な製品を大量に供給する)といった目的に合致される為の仕様変更。
また、右上にストロボ同調のソケットが見えるが、これもゾルキーCにつけられた新機能で、夜間のストロボ撮影が可能になった。
それ以外の機構の変更はなく、真ん中の写真では、左がゾルキーⅠで、右がゾルキーCである。ストロボに同調してシャッター速度を修正出来る様に工夫されている。また、シャッターが固定(タイム撮影)出来る様になった。
フィルムの巻き戻しは、パルナック型ライカやゾルキーⅠでは、巻き上げボタンの左側のレバーを反対側に回すことで巻き上げから開放され、左側の巻き上げノブを回すことで巻き戻し作業を行うが、ゾルキーCは、シャッターボタンの根元の回転する様になっており、これを回転させることで巻き上げ機構からの開放が出来る。
一番右の写真は、飯ごうの底を外した様子で、左がゾルキーで、後期型なので、板バネがコの字型に変更されている。右は、細長いタイプで、これは、ゾルキーⅠの前期型やフェドでも同じ様な機構である。
左の機構の方がシャッターは重くなるが、リリースがスムーズで失敗がない。右の機構は、細長い板バネは、シャッターは柔らかく感触も良いが、ソビエトの様な寒冷地では、金属が堅くなって、シャッターのリリースが鈍くなることがあり、それで、ミスショットがたまに発生する。
結局、ゾルキーCは軍幹部が上に伸びて不細工になっただけの製品である。使う側にとっては、不愉快だが、ソビエト労働者にとっては、効率的に生産が出来る様になった「改良」である。
ドイツの精密な洗練されたデザインの「改良」、すなわち「デザインの退化」がソビエトカメラ工業の特色でもある。
まだ、ゾルキーCは、後年に登場するゾルキーⅢやフェドⅡ、ゾルキーⅣに比べてライカらしさが残っている。
不細工な分だけヤフオクでも評価は安く落札することが出来て、私が最初に入手したパルナック型のカメラもこのゾルキーCである。
このカメラを最初に入手した時、その重たい金属の冷ややかな感触と独特の匂いに魅了されてしまった。露出決定は全て勘と経験に頼り、ピント合わせも当然マニュアルという原始的な世界を経験することで、「写真を撮る」という行為の中での空間認識が実体性を帯びてくるのを、直感的に感じることが出来たと思う。
ちなみにゾルキーは、戦前からあるフェドから分かれたカメラメーカーのブランドで、モスクワのクラスノゴルスク工場で生産された。フェドも戦後も存続するが、ゾルキーが、海外の輸出市場も範疇に入れて改良が加えられているのに対して、フェドは、ソビエト大衆向けの方向で製品展開をしていったので、品質・設計面では退化が著しいが、それはそれで、独自の面白さがある。
とても日本人の感性では、こんなカメラは作れないだろう。日本のカメラメーカーのパルナックカメラのコピーは、キャノン等でも生産されるが、これらは、国友等の鉄砲鍛冶に共通する独自の感性の洗練、デザインの追求が感じられるのに対して、やはり、ソビエトは、独自の文化・気風を持っていた国だということが言えるだろう。
ソビエトのゾルキーシリーズは、フェドⅠ型と同様にライカⅡ型をベースにソビエトナイズされたカメラで、ゾルキーⅠは、ライカⅡ型の原形をほぼ忠実に追っている。
フォーカルプレインシャッターや機構部は、ほぼ完全にライカを再現しているが、さすがにあのロシア人の無骨な腕やぶっとい指なんかを思い浮かべれば良いと思うが、おおざっぱな面もあり、工作の精度は出ていない。
日本のカメラ修理工も、ソビエト(ロシア)カメラは、カメラではないと修理を断る人も未だにいる位。
ゾルキーCは、下のゾルキーⅠに比べて軍幹部(上の銀色の部分)が上に伸び上がっている。
なにやら「ゆるキャラ」風のデザインの変更である。また、軍幹部の段差がなくなって、加工がやりやすくなる様に工夫されている。
つまり、ソビエト共産主義の工業原理(大衆に安価な製品を大量に供給する)といった目的に合致される為の仕様変更。
また、右上にストロボ同調のソケットが見えるが、これもゾルキーCにつけられた新機能で、夜間のストロボ撮影が可能になった。
それ以外の機構の変更はなく、真ん中の写真では、左がゾルキーⅠで、右がゾルキーCである。ストロボに同調してシャッター速度を修正出来る様に工夫されている。また、シャッターが固定(タイム撮影)出来る様になった。
フィルムの巻き戻しは、パルナック型ライカやゾルキーⅠでは、巻き上げボタンの左側のレバーを反対側に回すことで巻き上げから開放され、左側の巻き上げノブを回すことで巻き戻し作業を行うが、ゾルキーCは、シャッターボタンの根元の回転する様になっており、これを回転させることで巻き上げ機構からの開放が出来る。
一番右の写真は、飯ごうの底を外した様子で、左がゾルキーで、後期型なので、板バネがコの字型に変更されている。右は、細長いタイプで、これは、ゾルキーⅠの前期型やフェドでも同じ様な機構である。
左の機構の方がシャッターは重くなるが、リリースがスムーズで失敗がない。右の機構は、細長い板バネは、シャッターは柔らかく感触も良いが、ソビエトの様な寒冷地では、金属が堅くなって、シャッターのリリースが鈍くなることがあり、それで、ミスショットがたまに発生する。
結局、ゾルキーCは軍幹部が上に伸びて不細工になっただけの製品である。使う側にとっては、不愉快だが、ソビエト労働者にとっては、効率的に生産が出来る様になった「改良」である。
ドイツの精密な洗練されたデザインの「改良」、すなわち「デザインの退化」がソビエトカメラ工業の特色でもある。
まだ、ゾルキーCは、後年に登場するゾルキーⅢやフェドⅡ、ゾルキーⅣに比べてライカらしさが残っている。
不細工な分だけヤフオクでも評価は安く落札することが出来て、私が最初に入手したパルナック型のカメラもこのゾルキーCである。
このカメラを最初に入手した時、その重たい金属の冷ややかな感触と独特の匂いに魅了されてしまった。露出決定は全て勘と経験に頼り、ピント合わせも当然マニュアルという原始的な世界を経験することで、「写真を撮る」という行為の中での空間認識が実体性を帯びてくるのを、直感的に感じることが出来たと思う。
ちなみにゾルキーは、戦前からあるフェドから分かれたカメラメーカーのブランドで、モスクワのクラスノゴルスク工場で生産された。フェドも戦後も存続するが、ゾルキーが、海外の輸出市場も範疇に入れて改良が加えられているのに対して、フェドは、ソビエト大衆向けの方向で製品展開をしていったので、品質・設計面では退化が著しいが、それはそれで、独自の面白さがある。
とても日本人の感性では、こんなカメラは作れないだろう。日本のカメラメーカーのパルナックカメラのコピーは、キャノン等でも生産されるが、これらは、国友等の鉄砲鍛冶に共通する独自の感性の洗練、デザインの追求が感じられるのに対して、やはり、ソビエトは、独自の文化・気風を持っていた国だということが言えるだろう。
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