1980年代.....凄く遠い過去になってしまった2009/11/08 23:34

 家を買って色々な煩雑な手続き、作業に疲れてしまって、今日は、自宅にずっと籠もっている。

 なにやら宙ぶらりんな不安な気持ちである。この気持ちのまま来年まで過ごさないと行けない。

 塞いだ気持ちで雑誌の山に手を伸ばすと、レコード芸術1984年10月号があった。

 私の部屋には、1970年代から1984年代の雑誌とかカセットとか、LPレコードとかがあって、それらを聴きながら雑誌を開いて寝転んで読むのが、何よりの楽しみである。

 再生装置は、さすがに当時のもので総ては揃えられないが、当時、発売されたYAMAHAのGT750というレコードプレイヤーとか管球アンプで再生された音楽を聴く。

 今日は、クナッパーツブッシュのワーグナー名演集(かつてロンドンで発売されていた2枚組のダイジェスト廉価版を聴く)

 レコードの良いのは、歌手から聴き手までの距離、背の高さ、口の大きさ、立ち位置等が手に取る様に判ることであり、優秀録音では、左側のヴァイオリンの前後までが分離して聞こえる。

 CDやSCDでは、ここまでの定位とか奥行きは期待できない。一方で、さすがにレンジ感とかSN比等は優れているが、かえってレンジの広さが聴いていて嫌になることがある。

 CDの音を少しでも良くする為には、良質のプリメインアンプのプリアウトとかプリアンプ(これは、むしろ、半導体の方が良い感じがある。)から管球パワーアンプに出力することで、インピーダンスのマッチング等に注意すれば、CDの欠点を抑えることが出来るが、それでも定位感の再現まではいかない。

 MCカートリッジの昇圧トランスは、自作品だが、今回、コイルの部分を更にグレードアップした部品に換えてみたら、驚く程、音が良くなった。

 ニルソンの声を聴きながら、レコード芸術の頁をめくる。

 最初に藁科雅美先生の記事が載っている。藁科先生も亡くなられて何年になるだろうか。
 
 当時、愛聴していたFM番組クラシックリクエストで素晴らしい解説を独特の嗄れた声でして下さったので、番組が凄く愉しかった。

 この人の解説で、ルドルフ・ケンペのブルックナーを初めて聞いた時の感動が蘇る。LPレコードのジャケットの解説も味わいがある独特の文章で、特に東ドイツの指揮者とかオーケストラに蘊蓄が深かった。

 次の頁には、「カラヤン、最新録音5点、カラヤンは進み続ける」という広告があった。

 カラヤン来日記念のシベリウスのLPレコードの宣伝が載っている。
 
 この年のカラヤンの大阪公演を完成してから間もない大阪シンフォニーホールに聴きに行ったのをつい最近の様に想い出される。

 カラヤン、ベルリンフィルのフォルテッシモよりも、当時の朝比奈・大フィルのフォルテッシモの方が、ずっとウルサク、実際の音も大きいが、ベルリンフィルの最弱音の繊細さ、小ささと輝く様な大音響との対比でカラヤンの演奏はキラキラと金銀の砂をまき散らした様な華麗さであった。

 カルロス・クライバー(この人もこの世の人ではない。)のベートーヴェンの交響曲第4番(バイエルン国立管弦楽団)のライブ演奏のLPが交響曲コーナー冒頭を飾っている。

 小石氏も諸井氏も口を極めて褒めている。このLP、私も買ったが、あんまり良い演奏ではないと思った。

 レコードの版元も大きな会社ではないので、盤質も今ひとつであった。CDの登場で徐々にLPレコードに各社とも力が入らなくなってきていて、プレスの品質・盤質の低下が目立っていた。

 (スケールが小さいし、コセコセしている。むしろ、日本公演のライブ録音の方が演奏は良い。)

 CBS・SONYの宣伝では、娘の様な顔をした中村紘子さんのショパンコンチェルトのLPレコードの広告が。(随分、若く見えるが、この時、既に何歳だったんだろう。)

 後は、フルトヴェングラーの指輪のチェトラ盤(ローマ放送交響楽団との演奏会形式のライブ)とか、フルトヴェングラー没後30周年ということで、CDがこの年から多数発売される様になっていく。

 最後に巻末をみると、音楽の友社の社員募集の広告が掲載されていて、当時、大学4年の私は、東京まで入社試験を受けにいった。(交通費自弁で、しかも、筆記試験が合格で面接までいったので、3回位往復して、驚く程の金がかかった。)

 結局、不合格......................

 この後、数社受けたが、総て不採用。
 最後に通った印刷会社も内定取り消し。

 25年前の私が、この広告を見なければ、人生は今とは変わっていただろうか。

 1980年代.....凄く遠い過去になってしまった。
 退行願望がどんどん強まっていく。

 こんな時代に戻りたいので、あんな1970年代後半に建築されたボロ家に惹かれるのかも知れない。(当時から殆ど手が加わっていない奇跡の物件である。)


 30年位経つと家はボロボロになるが、当時、購入したLPは、丁寧に手入れ保管されていたので、新品同様で、音も未だに鮮明、購入当時よりも鮮やかさが増した様な感じさえする。

 写真は藁科雅美氏の記事

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