ソニーの経営危機はMDの危機2012/11/12 15:03

またMDを聴いている。CDに比べて気を使うこともないし、iPodの様に選曲の煩わしい操作も要らない。ましてやiTunesのような操作性の悪いソフトをノロノロ起動させることなくカチャとミニコンの挿入口に入れるだけ。
何時も聴く曲は二三曲程度なのでデジタルコピーを一度すれば耳タコで聞ける。
音質がどうもと言う人もいるがSPモードであればMP3より音質がましのような気も。ヤフオクで落札したアニフィスの朝比奈ブラ1を聴いている。
俄仕立てのオケなのに演奏は緻密で緊張感に溢れている。
残念ながらMDが聴けるコンポが殆どなくなってしまったのでソニーのおそらく最期の機種を買うかどうか迷っている。
ソニーも危機的な経営状態なのでこういった時代から取り残された機種から廃止されて行くだろう。デジカメやマイナーな家電シェアが低いウォークマン等も危ないだろう。
まさに悪貨良貨を駆逐するである。

クリスキットMalkⅥ2012/11/03 11:17

クリスキットMalkⅥ管球プリ。

神戸の出品者のお店で、丁寧に整備されていたので、電解コンデンサ等も全て交換されており、雑音もなく、順調に動いている。

フォノイコライザは、購入当初は、少し硬い目でレンジが狭かったのが、毎日LPレコードをかけていると、音に柔らかさが出てきてレンジも広がり、バランスの良い音となる。

CDの音は、管球ラインアンプ経由となるが、柔らかく、それでいて透明度の高い音、ハイカット、ローブーストがついているが、ハイカットを12KhzでかけるとCDの音もまったりとした音に変わってよくなる。

パワーアンプは、2A3シングルの無帰還であるが、クリスキットのプリでは、ゲインがやや不足。ボリウムを2時位で通常再生音量となる。ゲインを調整すればよいのだが、筐体を開ける気にはなれない。

真空管特有の良い匂いが点火してしばらくするとしてくる。
この匂いを嗅ぐのが好きである。

自作のプリと切り替えできる様にしてある。
居住環境からあまり、大きな音で再生出来ないので、このプリの再生音程度がちょうどかな。

レコードを聴くのが楽しくなった。

死滅メディア 哀しきロンサムジョージ2012/10/24 20:39

最近、凄まじい勢いで死滅してしまったのが、MD。
現在、MDが再生可能な機器(コンポ)を現役で出しているのは、ONKYO(ひょっとしたら旧機種の売れ残り?)とSONYしかない。

SONYのは、CD、MD、カセット、ウォークマンと旧メディアの博物館のミニコン。
http://www.sony.jp/system-stereo/products/CMT-M35WM/

昔は、どこにでもあるありふれたミニコンだが、今や、SONYしかない。
結局、SONYはI-PODを使える機器は出せないので、旧機種の博物館にならざるを得ない。

音質などの評価は低いらしい。実売価格2万円位。
同値水準で日本直販等で、レコードとCDとカセットとUSBの機種が出ており、こちらは、2万5千円位。MDはついていない。

面白いのは、MDが死滅しているので、今の20位の人は、もう、このメディアを知らない人がいて、どうやって再生するのかとかそういった質問コーナーまである。お父ちゃんの引き出しから出て来たんだけれどとか。
MDは、僕は、発売された当初から購入して、その音質に感動したが、今や昔話。

このSONYのコンポも昔のカセットやMD等の黄金時代を知るものにとっては、技術的にも品質的にも最低水準。.それでも使えるだけがマシ。

3HEADのカセットデッキや高級MDデッキの音と比較する方がおかしい。最低限の機能が辛うじて退化して残っているのにみんな感動、経緯を表明して購入する。

最近、レコードやカセットをデジタルメディアに簡単にコピー出来る商品が多く発売されているが、プレイヤーは、昔の子供用のプレイヤーに使用されていたレベルのアイドラドライブ、針圧が強すぎてレコードを台無しにしてしまうセラミックカートリッジ(イコライザーが要らない。セラミックの特性でRIAAカーブに使い特性を得る様にされている。)あるいは、ノイズリダクションさえついていないカセットデッキが無理矢理にリバースにされており、ワウだらけ。

これらのメディアに比べると、MDは、音質でみても数ランクつがうが不要に低い扱いを受けて、ガラパゴス化されて日本でロンサムジョージになろうとしている。

ヤフオクで過去のパナソニックのミニコンを買ったが、もう退化の兆候が出ていてカセットは最低ランク、MDも耐久性がなく直ぐに壊れる代物。音飛びがして使い物にならないチェンジャー等々。それでもMDが聴けるので、このぼろい中古を使用している。

これももはやチェンジャーも壊れ、さっき、カセットも壊れた。
真空管のCDプレイヤーやPCのUSBのデジタル音源をこれで聴いていると、それ程、悪い音でもないが、良い音でもない。それでも音楽演奏の良否は判る。

こんなのでもPCからUSBモードでダイレクトで録音出来ないようにプロテクトされているのも哀しいもの。

O let me living die,till death do come.2011/01/30 12:31

 実家にあるクリスキットでは、古楽を中心に聴いている。

 YAMAHAのモニタースピーカーでは、音質が声楽や古楽に適している。管弦楽は、古典派の曲までである。

 特に、最近は、ダウランドがお気に入りである。大学の時には、リコーダーコンソートの伴奏をしていたので、どうしても気に入った曲が多い。

 リコーダーもやっていたので、流れよわが涙も、リュート曲や、ギター編曲版、バン・エイクの無伴奏のリコーダ独奏等、様々なバージョンで楽しんだ。
 
 ここでは、アントニー・ルーリーのコンソート・オブ・ミュージックでは、男声、女声、リュート、ビオラダガンバの組み合わせである。

 クリスキットだと特に、歌い手の顔までもが、表現される感じで、20畳位の部屋で聞くと、本当に生演奏を聴いている様な感じだろう。

 この中で、一番、好きなのは、「暗闇で(暗闇に僕は住みたい」という曲。

 in darkness let me dwell,the ground shall Sorrow be;
The roof Despair to bar all cheerful light from me;
The walls if marble black that moisten'd still shall weep;
My music hellish jarring souds to banish friendly sleep;
Thes wedded to my woes and bedded to my tomb,
O let me living die,till death do come.


何時も、1人で眠る時に、この音楽をかけてから部屋を真っ暗にして、眠りに入るのが日課である。

花のワルツは終わった2011/01/19 23:57

 神戸の山奥に引っ込んでから、大阪・梅田の様子もだいぶ変わってしまった。

 まず、大好きなお蕎麦屋のツルツル庵がSさんが隠居されて、息子さんがツルツル庵とは、別の店を新たに2月に立ち上げるという。

 Sさんは、クラカメもやられ、更に、オーディオマニアなので、趣味が2つも共通なので、大阪にいる時は、毎日の様に、蕎麦を食べに通っていた。

 また、堂島アバンザのツルタ眼鏡店がなくなって、マッサージの店に変わっていた。ここの眼鏡は、高級品なので、4~5万はする。ここで以前、作ってもらったのがあるが、勿体無くてかけられない。

 このお店でわざわざ高い眼鏡を買った理由は、先代から存じているが、ここの若旦那が、ペーパークラフトの大家で、紙でよくこれだけという彫像とか、昆虫の模型等を作っておられた。向かいのコーヒーショップから、それらのオブジェをみているウチに、眼鏡を買う羽目になってしまった。

 眼鏡は、ちゃんとしたものだが、調整があまりにもシビアで、かけていると疲れるので、結局、普及品の眼鏡の方が気楽になってしまう。だから、お客さんが減ったのでは。どうせなら、ペーパークラフトをキット化して、パーツを含めて販売をしたら、儲かったのにと思う。昆虫シリーズ、特に、カミキリムシはまるで生きているみたいだった。

 最後に閉店となったのが、ワルティ堂島である。

 このお店は、もともとワルツ堂といって、堂島の毎日新聞本社ビルの隣で営業されていたが、現在の場所に移られた。

 僕は、レコード時代からワルツ堂通いで、特に大フィルの定演等で、フェスティバルホール等に行く途中に時間つぶしによく、このお店に来て、中古のレコードを買っていた。

 クラシックとジャズの2本立てで、クラシック専門店としては、最初にDaigaという店が滅び、シンフォニア大月が滅び、更にシンフォニアかDaigaの店員さんがやっていたクラシック専門店も直ぐに潰れた中で、最後の生き残りがワルティ堂島であった。

 当然、マニアのたまり場だし、店員さんもマニアだったので、マニア以外の人が入れない雰囲気だった。外国盤の廉価CD等で面白いものがたまに販売されていた。

 常連さんが多い店は、飲み屋、CD店もカメラ屋も危ない。店員が客と同次元で話をしてはいけない。商品知識等は必要だが、あくまでも店員と客の関係で、どんな客にも平等に振る舞わなかったことが閉店につながった。(僕なんか嫌われていた。また、ジャズの店員とクラシックの店員の仲も悪かった。)

 また、クラシックの黄金時代、巨匠が次々に新譜を出していた時代が終わり、雑魚キャラの新人の新譜が出るが、これもこれも変わり映えがしない。そうこうしているウチに、IPOD、ITUNEが全盛となり、更にAMAZONの通販も台頭して、レコードショップで、CDを買うという行為自体が世の中から廃れてしまった。

 それにしても寂しい。

 ○花のワルツの光消え希望消え

怖ろしい程、細かい音が聞こえる。2011/01/16 23:20

 四条センターでは、黒田先生にお話することができなかったので、クリスキットのことを話せず仕舞い。

 クリスキットが懐かしかったので、久しぶりに電源投入。DENONのプリメインの上にあるのが、クリスキットMARK8D。

 MARK8Dでは、LPレコードが再生出来ないので、DENONのRECOUTからイコライザーアンプからの信号を取り出す。

 スピーカーは、SE120がおうぶに持って来てしまっているので、桝谷さんが唯一推奨されていたYAMAHAのモニタースピーカーを接続して聴く。

 やはり、ノイズが少ないせいか微細な音の特長やら、テープの場合は、ヒスノイズが盛大に聞こえる。DENONや300Bでは、それ程、気にならなかったヒスノイズであるが、ここでは気になる。

 また、CDでもアナログ録音等は、マスターの劣化とか、スタジオノイズとか、とにかく怖ろしい程、細かい音が聞こえる。

 声楽等は、歌手の息継ぎとか良く判るし、ピアノの場合は、タッチの変化や強弱、アクセントが他のシステムに比べて際立っている。

 たしかに凄いが、音楽を楽しんで聴くにはどうかな。

 右は、桝谷先生推奨のVICTORの3HEADカセットデッキ。これも素晴らしい製品である。テープの限界まで再生出来る。上は、SONYのSACD等々。

 カセットデッキの下は、パラサウンドというマイナーメーカーのDAC。凄く分厚い、情報量の多い音が聞こえる。

エッジレスのメリット2010/12/28 16:58

パイオニアの特許

 エッジレススピーカーをヤフオクで中古で買って聞いているが、なかなか素直な音で良い。

 エッジレスのメリットは、次の様に特許で説明されている。
http://www.patentjp.com/09/T/T100038/DA10137.html

一般のコーン型スピーカは、振動板の外周部にエッジを設け、このエッジによって振動板を保持すると共にキャビネット内部と外部の空気の流通を遮断している。このエッジは、振動板の中心保持と同時に前後方向の動き易さを得るために柔軟な素材で作られている。ところが、この柔軟さのために特定の周波数でエッジが共振を起こしたり、大振幅時にキャビネットの内部の圧力変化のために、異音を発生させることがあった。これらを解決するため、いわゆるエッジレススピーカという構造が考案され実施されている。

 つまり、高出力以外では、高価が発揮されない筈だが、以前、パイオニアのシステムを「爆音」で聞いていた時にカタカタという音がしたことがあった。このシステムは、通常エッジのスピーカーユニットを使用していた。

 マウロ・ジュリアーニのギター協奏曲を聴いていたが、たしかに弦のユニゾンの時に自然に音の重なりが表現されてなにやらよさげな。

 ホーンツィーター等も使ってみたいな。スピーカーの台がないので、ダイソーで間に合わせで金属棚の部品を買って作ってみた。

 またまた、ダイソーで部品の点数が揃わないという難儀に遭遇。仕入れをキチンとしないと、こんな商品、何時までも売れ残ると思うので、この辺りが、100円ショップの限界かな。

五味は、○○○だから、こんな馬鹿でかい音で聴きよるんか2010/12/19 22:53

 炬燵に入ってクラシック音楽等を聴くのが楽しい季節になった。

 特にウィーンフィルでカールベームのシューベルトとかモーツァルトのシンフォニーが好き。

 今日は、シューベルトの交響曲第5番を聴いた。この曲がシューベルトの交響曲で一番好き。一番嫌いなのが、あのザ・グレート(長いだけの様な気がする。)

 装置は、K先生のとは比べものにならない「貧困コンポ」である。

 12年前に初めて制作したエレキットのTU870は、良い音がしている。ボリウムにガリが出たので交換したが、基盤に載せるタイプのボリウムなので、アルプス電気等を捜したが、基盤の穴に合うものがなかったので、基盤に電線を這わしてつけている。ついでもツマミも交換した。

 このアンプキットはシャブリ尽くした感じ。回路図もあったので、全く、回路でデッドコピーしてタンゴのトランスで作り直したのもある。トランスがタンゴに換わると,さすがにレンジが伸びるから不思議。

http://www.asahi-net.or.jp/~ZZ2T-FRY/6bm8.htm


 右は、真空管式CDプレイヤーで、これもエレキットのもの。最初に販売されたもの。音の方は、真空管を使っている割りには,音が固い。少しでも柔らかい音を出させる為に、12AU7Aをオールド品に交換したいと思っている。

 右は、先日、ヤフオクで5千円で落札した、パイオニアのエッジレススピーカー。

 エッジレススピーカーは、この会社幾つか販売しており、管球王国にも「球向き」と紹介されていたが、実際、自然な音がして良い。但し、中音域にややエコーがかかった様な音(つまり音像がボヤケ気味)になるのが、気になる。ボーカル等は良いが、器楽では、やや中抜け感にもつながる。低音は凄くなる。ソフトドームが潰れていたので、安かった。

 何時も不思議に思うのは、ヨドバシとかの展示品でもソフトドームが潰れたのをみかけるが、あれをどうしても潰したくなる人っているのね。

 これもガムテープとか粘着力のあるテープで窪みに何か尖った棒で擦り擦りして、くっつけてから、ボチッと引っ張る様にしていると、徐々に元通りになる。

 いずれにしても、こんな貧弱なシステムでも十分に楽しめるので、高価なシステムを買う金があったら、CDとかソフトを買ったり、実際の演奏会等に出かけたりした方が、どっかの先生よりも知的だと思いますが。

 この先生は、部屋全体をエンクロージャーにして、80㎝超低音ウーハーを入れているというが、いずれ、コンクリートホーンへと進化を遂げるかも。

 そうなると五味康祐の『オーディオ遍歴』という新潮文庫を読んだことが想い出される。

http://toyovax.sakura.ne.jp/audio/tannoy.htm

 高城重躬というエライ先生が勧めたんでコンクリートホーンにしたのだが、巨大な噴火口の様なホーンの入り口から空気の様に迫ってくる超低音に感動。まるでバイロイトのオーケストラボックスから上がってくる音の様と最初は思っていたのだが、こういった超低音、大型のホーンやスピーカーから聞こえてくる音は、「実体感」がない。

 小林秀雄が五味の家に来て、「五味は、○○○だから、こんな馬鹿でかい音で聴きよるんか。」といったそう。

 小林がオーディオ談義しているSP録音を聴いたことがあるが、この人の毒舌ぶりは凄い。

 そんな話は別にして、マルチアンプシステムで別々のシステムから音が出てくると、例えば、1人のソリストが数人別々の楽器を演奏している様で、なじめないということで、タンノイのオートグラフに替えたという文章がある。

 僕もそう思う。マルチアンプ・スピーカーのシステムは、まだ、ネットワークならば、救いようがあるが、チャンネルデバイダーを介して、別々のパワーアンプで、1個の楽器音が再生された場合、およそ実体感の無い、不気味な音に聞こえる。

 また、マルチスピーカーにネットワークを介しても、結局、このネットワークというのが、交流理論を学んだ人は、判ると思うが、アスペクトが狂ってしまうので、正確な音の再生は、難しい。

 だから、1階の部屋で、アナログ専用のシステムに使用しているSE-120が、ロクハン1本で、これがベストだと思う。

信じられへん!! あの黒田先生がクリスキットハイパーユーザーなんて2010/12/17 21:41

 クリスキットと言えば、桝谷英哉先生の開発したトランジスターアンプ及びスピーカーのシステムである。

 アナログ時代は、MARK8までのプリアンプには、イコライザーアンプが搭載されており、その透明度が高く、ハイフィディリティの音質には、定評があった。

 CD時代には、MARK8Dに変わって、イコライザーアンプの部分が外された。音質的には、それ程、大きな変化はみられない素直な再生特性を持つ。

 パワーアンプは、P35-Ⅲである。これも大きな特色は持たない。残念ながら、僕が持っているのは、後期モデルなので、トランジスターが、当時、安定供給可能な型番に変更されて、かなり音質自体が変わってしまったと聞いている。

 実際の周波数測定を私が行ったデータがあるが、平坦な再生特性なので、安心して使えるし、飽きも来にくい良質なセットだと思う。

http://fry.asablo.jp/blog/2008/12/25/4027163

 パーツセット(完成を保証するキットではない。あくまでも必要な部品をそろえたという建前での販売されていた。)

 電気用品取締法等の制約があり、この方法での販売手法を採られたのだと思う。

 今、発売元の神戸のクリスコーポレーション自体が営業を停止しており、キットの販売は行われていない。従って、このキットを入手したい人は、ヤフーオークションや中古品で入手する以外に方法はない。

 発売が中止されてからそろそろコンデンサ(電解)等の交換時期に来ているが、交換パーツを手に入れることは、難しいので、代替品に置き換えるしかないようだ。

 私も一時期、入れ込んだ時期があって、ホーンスピーカーやチャンネルデバイダー等もそろえてやったが、音質的には、SE-120の120リットル密閉箱とP-610DBの組み合わせがベストと判断して、このシステムしばらく聞き込んでいた。

 その後は、残念ながら、騒音クレーム等が来て、より出力の低い管球アンプ(オリジナル自作回路)に置き換えて、おうぶの家で聞いている。

 従ってクリスキットは、スピーカーボックスだけという状態。アンプ自体は、プリ2台、チャンネルデバイダー1台、パワー2台を保有しているが、休眠状態になってしまっている。

 クリスコーポレーションが操業を停止して、クリスキットの信者を守り続けている殊勝な人は、減ってしまって、それらのシステムがオークションで販売されている。

 ところがというか、悪夢というか、信じられないことが起こった。

 なんと、佛教大学の通信大学院でお世話になった黒田彰先生が、熱心なクリスキットの信者さんであったのだ。驚き。それも恐らく、国内で最高のクリスキットのシステムを現役で最高の環境で運用されている。

 黒田先生は、中世日本文学のご専攻で、同じ関大の同窓生なので、何度もお目にかかったのに、今回、初めて、そのことを知ったのが、佛教大学四条センターの機関誌。

 写真をみるかぎり、ウーハーのシステムは、クリスキットのオリジナル密閉箱ではなくなっているが、アンプ類は、クリスキットを恐らく左右独立で使用されておられるとみえて、チャンネルデバイダーから、アンプまで、通常の倍の数を使用されている。

 あの今の世にも珍しい篤学、学問一筋にやっていらっしゃると思った黒田先生がオーディオマニア、それも、「日本最強のクリスキット愛好者」なんて、悪夢かしら、およそ平家物語や孝子伝の世界とかけ離れている。

 夢であったら覚めて欲しいが、身近な親族から、「隠れキリシタン」あるいは、実は、「アンヌ君、僕は、ウルトラマンなんだ。」と打ち明けられた科学特捜隊の隊員の衝撃に匹敵する。

 でもシステムの音を是非、聞かせていただきたい。

 もっと衝撃的だったのは、黒田先生は、ワグネリアンだったのだ。

 ワグネリアンと平家物語剣巻との関連性って、実は、大ありなんですよ。

第2楽章のギリシャ彫刻の乙女を思わせる静謐さ2010/10/12 21:18

 仕事が終わると、一杯やりながら、アナログレコードを聴くのが、最大の楽しみである。

 音楽室には、オーディオシステムと椅子しか置いていないので、音も良く響く。(今後、鍵盤楽器を置く予定)

 CDでは、聴く態度が散漫になってしまいがちだが、どうゆう訳か、アナログレコードでは、シンフォニーが1曲終わるまで、集中して耳を傾けてしまう。

 LPを聴くシステムは、増幅素子はイコライザー、ラインアンプ、パワーアンプを含めて全て管球式で、イコライザーアンプが
4本、ラインアンプが2本、そして、写真のパワーアンプが5本、合計11本の真空管を使用している。(1本は、交流→直流変換用)

 半導体素子は、イコライザーアンプ及びラインアンプの電源部のダイオードを除いて、使用していない。至って丈夫で、今年で作成して12年を迎えるが、真空管は1回交換したが、まったく故障はおきていない。市販のAV機器は、7~8年が寿命だが、これは、交換部品がある限り稼動し続ける。

 今日聴いたのは、ベートーヴェンの交響曲第4番(アンドレ・クリュインタンス指揮、伯林フィルハーモニー管弦楽団)。

 ベートーヴェンの交響曲の中で、以前は、奇数番号を中心に聞いていたが、3、5、7、9番を聴かなくなり、その後、2番も聴かなくなった。今、好んで聴いているのは、1番、4番、8番の3曲である。

 別にベートーヴェンが嫌いなのではない。奇数番は、所謂名盤が数多あって、SP時代から、古楽器演奏に至るまで聞き尽くしてしまって、少し食傷してしまった。

 しかし、1、4、8番はなんど聴いても飽きない。1番は、第1~2楽章、第4楽章が良い。特に第2楽章を気分が優れない時に聴くと治療効果がある。あの幼児が、トントンと歩いていく様な感じが心の慰めになる。

 8番は、第1楽章はしつこい動機の繰り返しが7番並みであるので、少しウンザリだが、あの可憐なメトロノームを模して作曲された第2楽章とユーモラスなホルンのトリオが聴ける第3楽章のメヌエットが出色の出来である。このホルンの演奏が非常に難しい。昔、オットー・クレンペラー、フィルハーモニア菅の演奏会で、デニスブレインの演奏を聴いたが、さすがに上手だった。

 しかし、4番は、特別だ。

 第1楽章の導入部から主題の開始のワクワクする気分。第2楽章のギリシャ彫刻の乙女を思わせる静謐さ。第3楽章は少し弱いが、圧倒的な盛り上がり、速度感を持ったフィナーレが最後のコーダに向かって、また、静かな回想に戻り、ふと我に返ったかの様にアレグロで終わるコーダ。素晴らしい。

 特に4番で何が優れているかと言えば、楽器法がどの交響曲よりも優れている点である。特にファゴットやビオラ、チェロ等の中低音楽器の用法が、以前のシンフォニーに比べて進歩している。その成果は、第5~第6番にも現れているが、かなり、表面的な効果を狙っているのに対して、第4番では、あくまでもインティメートな効果を狙っている点が素晴らしい。

 楽器法の工夫による地味な渋い色彩感が、この曲の静謐な古典性の価値を一層高めていると言っても過言ではない。しかし、良い演奏は少ない。大抵の指揮者は、効果を狙ってあざとく演奏してしまう。

 そういった点で、アンドレ・クリュインタンスは、フランスの指揮者の良さと伯林フィルの精緻な表現技術がブレンドされて、なんの作為もなくて、自然な音楽が流れていく。

 こうした「自然な演奏」は、やはり、本来のアナログレコードと真空管アンプで聴いてこそ価値が発揮されるのだと僕は思う。