『方丈記』(角川文庫ソフィア)2008/06/15 10:41

 梅原猛の『法然』に方丈記が引用されていたので、購入した。
 『方丈記』は、岩波古典大系(旧の方)、小学館全集、新潮古典集成、岩波文庫を所有しているが、岩波文庫が古くなったので、角川文庫ソフィアを購入した。
 この本、通信の修士課程にいた時に、同窓生が、修論の中間発表の的にテキストに角川文庫ソフィアを使用している旨、レジュメの参考文献欄に書いてあったを、近代文学を専攻されているポストドクターのAさんが、目敏くみつけて、「いくらなんでも修論のテキスト・本文に角川文庫ソフィアを使用するのは、修論の研究にはそぐわないのでは。」と責められたのが印象に残っている。
 これに対して、黒田彰先生が、「いやいや、これで良いのだよ。」と一言発言されて、黒田先生がそういうのならばという事になった。
 私は、その時に、この文庫本の内容については知らなかったが、少し気にはとめていた。
 実際に購入してみると、方丈記の研究には、必須の文献資料であることが判った。岩波大系や全集では参考にはならないが、この本は凄い。
 底本には、大福光寺本が使用されているが、これ以外に、参考資料として、『異本方丈記』長亨本、延徳本が収載されている他、『真名本方丈記』も収載されているので、これで、方丈記の主要本文を全て読む事が出来る。
 これらの内容を校合して、考察を加えるだけで、論文が書けると思う。
 これ以外に『四部合戦状本平家物語』、『屋代本平家物語』、白居易の『池上篇・序』、同『草堂記』、『池亭記』等々多くの文献も付録として収載されている。
 これらの資料は、前半の天災の部分、後半の草庵の庵を結んだ心境を語る際に、鴨長明が引用したかあるいは参考にしたと見られる文献であり、これらを比較する事で、平安末期の世相等を資料的に考察することが出来る。
 方丈記を読んでいて、「これは、今の世にも言える事ではないだろうか。」と思った。
 地球温暖化の影響で大気の対流が活発化して、つむじ風、台風等の暴風が吹き荒れる。更に、風災は、異常気象への備え、防災に対して全く無防備な京の都に大火災をもたらす。
 治承・寿永の乱で、源平両軍は、食料を農家から略奪し、更に異常気象の影響で殆ど作物が採れなかった為に畿内の農村からの供給に依存している京の食糧事情は瞬く間に悪化し、数万人の餓死者が出た。
 次の年には、大地震が発生し、洛中の寺院仏閣の多くが倒壊した。奈良の大仏の首も落ち末法の世の到来である。
 水、火、風、地という四大種のことごとくが人間に向かって牙をむき始めた末法の世は、人心の乱れによってもたらされた。
 まさに地球温暖化は、自然や環境を破壊し続けて人間の所業によるものだ。北極の大量の氷が溶けて、ユーラシア大陸及び周辺部の地殻・プレートが持ち上がった(アイソスタシー理論)、この為、太平洋、インド洋のプレートの北上を支えきれなくなって地殻がきしみ始めて、これまで数万年も休止していた断層が、天体の潮汐運動が契機となって、崩壊し、数々の大地震が発生する。
 飢えと災害に苦しむ民の様子は、
「また、いとあはれなる事も侍りき。さりがたき妻、をとこ持ちたるものは、その思ひまさりて、深きもの、必ず先立ちて死ぬ。」
 奢る為政者の所業の報いとしての天災は、庶民に降りかかり、食料さえも買えない状況になる。そうなれば、親は子供、あるい愛する家族への食料を優先して自らは、食を断って死んでいくありさまが、描写されている。
 まさに、この世の地獄だが、千年近くも前のことだから我々には関係ないとしているが、これからこの様な事が起こるかもしれない。
 日本は、大部分の食料をアメリカ中西部の穀倉地帯の生産農家に依存しているが、ここに、人・天災とも言える地球温暖化が原因となった異常気象で、洪水が起こり、多くの畑が全滅した。この為、エタノールはおろか、食料用の穀物の確保も困難になり、今年の秋から冬にかけて食料不足は深刻なものになる。
http://www.weather.com/multimedia/videoplayer.html?clip=365&from=hp_video_2
 食料品の価格は高騰し、貧乏人には買えなくなるだろう。
 既に、大阪のある地域では、飢えたその日暮らしの労働者達が、毎日の様に暴動を起こす様になっている。
 いつもかかりつけの病院には、知り合いのお年寄りがやってくるが、痩せ方が酷いので理由を聞いてみると、「後期高齢者の保険料が天引きされて、入院している奥さんの医療費も払うと食費が出ない。1日に朝夕の食事もおぼつかないという。」
 「苛政は虎よりも猛し。」いった中国の詩人もいるが、苛政も天災も、人災であるが、そのツケは、常に社会弱者に降りかかってくるのである。