最後の晩餐2008/05/28 09:16

 佛教大学に在籍しているのにキリスト教美術を扱うとはけしからんという事になるのだろうが、実はイコノロジーの研究は、キリスト教美術の方がずっと進んでいる。
 小磯画伯のアトリエの書棚にも中世のイコン等の図像集があり、創作活動の参考にしていたと考えられる。
 先日の小磯画伯の聖書挿絵展でも、構図を詳細に検討していくと実に面白いことが浮かび上がってくる。
 最後の晩餐のラフスケッチ(展覧会なので、筆写、撮影が不可能なので、完成画を加工してみた)では、テーブルの平行四辺形がまず先に描かれて、次に左上と右上の扉が描かれた。
 テーブルの両方の扉の位置は、画用紙の左下角の2本の延長線で結ばれ、右側の線は、キリスト像を透過している。左側の線は、ユダとみられる像を透過している。
 更にテーブルの四辺形の右辺と左辺にも恐らく最後の晩餐で重要な人物、ペテロ等が描かれているとみられる。
 つまり、真実と虚偽、聖と俗の2つの人間の生き方を示す構図になっているとかそういう説明になるのだと思う。
 画伯は、この線を決定した後で、デティールの作画にとりかかったようだ。
 聖と俗のテーマは、源氏物語絵巻では、鈴虫巻1では、画面の左端に俗体、中央に尼、右は、鈴虫が棲む前栽を表し、鈴虫の棲んだ声が聖なる存在と象徴され、左の俗から聖への構図構成になっている。
 聖書も源氏物語もいずれも画家の着想による構図であると思う。
  源氏物語絵巻の構図を研究していると、こうした面にまず目がいってしまうようになった。
 悪いのか、良いのか。

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