絢爛たる伽藍の中で2008/02/12 23:59

母校の懐かしい風景、ここも新学舎建設で取り壊されてしまった。戦前からの建物のそうだ。
 最近は、暗いニュースが多い。沖縄の米兵暴行事件等、地域の自立を脅かす事件の多い事。
 先週は、岩国市長選挙が報じられたが、結局、基地容認派の市長が当選した。国が基地移転を受け入れなければ、地方助成予算をカットすると圧力をかけて来た事も背景となっているようだ。
 4年前に佛大通信制社会学部応用社会学科の卒論で、地域活性化プロジェクトを取りあげたが、当時の岩国市の状況を取材調査を行った。基地問題ではないが、やはり、国からの地域助成事業の方が、住民主導の地域活性化プロジェクトよりも優先され、結局は、自主性が失われてしまう状況等を報告書にまとめた。
 国からの助成金を受けるという事は、やはり、一方で弱みを握られると言う事だ。
 私学助成もそうであり、財政的に厳しい大学では、予算のかなりの部分を国からの助成に依存している。
 もし、助成が受けられなかったら、多額の寄付金を父兄や学生から集めなければやって行けないと学校関係者はもらす。
 今回、定員割れを起こした私学への助成金を大幅にカットするという方針が文部科学省から示された。
 従来から、文科省から研究予算の助成を受ける為には、大学の運営から教育の具体的内容まで、大学基準協会の認証評価を受ける事が前提となっており、特に文化系では、国文、国史等の既存の学科教育制度の見直し(改革と呼ばれている)が行われなければ、予算が打ち切られるので、やむを得ず従うという事が、有名私学からFランクの大学まで行われている。
 その結果、人文学科という胡散臭い名前の学科が誕生、大学関係者では、「ジンモン」と呼んでいるらしい。「ジンブン」は、なにやら変なイメージを想像させるだからか。「人間とことば・・・」とか得たいの知れない名前の学科やコースで、従来の国文学を教えている知人もいる。それでも職を失ったり、研究予算をカットされるよりもマシという。
 今回は、これに追い打ちをかける状況である。しかし、得体の知れない名前、一体、何をこの大学で修得するのか判らない様な学部、学科は、これまで以上に定員を確保する事が難しくなってくるだろう。
 日本のジンブン系の大学教育は、今、危機的な状況に直面している。既存の学問・研究大系と教育システムの乖離が大きな障害となり、学会すら満足に開催出来ない状況になりつつある。
 国のやり方は、最初に無理な学部・教育体制の変更を強制し、学生離れを起こしやすい状態にしておいてから、定員割れ大学の助成金をカットするという。段階的な私学淘汰を目的としたものではないだろうかと疑いたくなる。
 定員割れの大学が助成金を打ち切られた事で、有名大学や企業や団体の財政支援が受けられる大学のみが生き残る状況が作られていく。
 この点は、地方・地域政策も、教育行政も共通しており、中央集権制が一層、強まる状況がもたらされることになるのだと思う。
 大学教育の独自性を維持するには、本質を追究していく以外にない。
 30年近く前に卒業した母校(関西の中流私学)を久しぶりに訪問した驚き呆れた。トイレはウォシュレットで、お湯が出る洗面所が屋外の施設まで作られている。新興宗教の神殿の様な建築物が次々に造られている。
 国からの助成金や高い授業料、更には校友から何億という寄付金を集めてこれらの施設が作られていく。
 私たちの大学時代は、夏の冷房さえなかった。トイレも石けんがあるだけで驚いたものである。 打ちっ放しのコンクリートは崩れて鉄筋が剥き出してで危険であった。それでも独自性があり、優れた研究を行っている先生の授業に感心したものである。
 至れり尽くせりの母校の図書館を訪問して驚いた。2階の開架閲覧室にある国文学の書籍はボロボロで、10年、20年もほったらかしの状態。
 学部生は、開架閲覧室でしか直接、本を取ってみる事が出来ないのが母校のシステム(4回生は特別扱いという事らしいが)
 3回生になって専攻コースを選ぶらしいが、この有様では、国語・国文学コースを専攻する学生が増える事は期待出来ない。
 多くの資金を投じて建設された巨大伽藍がキャンパスに林立する中で、学生の拠り所とする図書館蔵書は、貧乏だった私たちの大学生時代以下の水準になってしまっている。