『念仏の道ヨチヨチと』(小島康誉 東方出版)2008/10/20 23:45

『念仏の道ヨチヨチと』(小島康誉 東方出版)

 ヤフオクで僅か100円で入手。大分前に本屋さんで見かけて定価1000円ということで買おうかと思ったけれども躊躇していたが100円だと絶対買いだと思った。
 実際には、送料込みでヤフオクの簡単決済手数料を含めて300円は超えている。
 それでも安いと思う。
 内容は、もはや論理を越えた念仏求道の心境の吐露である。
 お念仏というものが、そういった存在の仕方をしているのだろう。
 「理屈でないところに価値がある。」
 1つのストーリーではなくて、エッセイの様なもの。
 浄土宗の宗務総長水谷先生の序文が書かれている。
 読んでいて、なるほどと思わせられるところもある。
 念仏を唱えることは、ただ単に修行者1人の極楽往生を願うという為のみにあるのでは、光明が遍くところ全ての衆生を結びつける「念仏の輪」ともいうべきものであることを体験談を交えて語った本であると思う。
 小島先生の念仏行脚の有様をもっと知りたい方は、佛教大学宗教部選書刊『法輪』第9号の9頁に収載されている「念仏行脚日本縦断」が一番、面白い読み物で、浄土宗信者のみならず、佛教大学とはどんな学校かとか、通信教育の意義とか、そういった事柄に関心を持たれている方にもお薦めである。 但し、佛教大学の朝の宗教行事として学内先生方が毎朝、様々な事柄を話されている内容を収録したものであり、一般に販売されている本ではない。
 この小島先生の講演も釈尊成道会特別講演の内容を収録されたものであるが、これは、『念仏の道ヨチヨチと』の段階に至るまでの宝石商ツルカメコーポレーション(今のあずみ株式会社は、昨年12月の大量の株式譲渡の結果、別の会社の子会社になってしまっている。)の社長が、インドで仏教に目覚めて、佛大通信教育に入学、僧侶となり、全国行脚、キジル千仏道やニヤ遺跡等の保存と発掘に私財を投げ打ってまで活躍されている現状に至るまでの道筋を自らの声で話されているのが印象的である。
 「念仏の道」とは、宗祖善導のいうところの「二河白道」のことである。現在の白道も数千キロも続き、北海道から九州までの長い道のりで、暑さ、寒さ、雨に耐え抜く行脚の旅である。道ばたに時折みられる交通事故の犠牲者の為の地蔵さんやお供えの花等を廻向供養しながらの旅である。
 そういった旅行姿は、『念仏の道ヨチヨチと』にも収載されている。
 この他に私が読んだ小島先生関連の本では、『実学と虚学―“学び”は人をどう変えるか 』(保阪 正康著 PHP文庫)等があるが、これは、ライターさんが小島氏にインタビューをして聞き取りで書いた本で、少し、著書の考え方や主観が入っているのが残念だと思う。
 今度、読んでみたいのが、『シルクロードニヤ遺跡の謎』(中井真季・小島康誉/東方出版/2002年)で、昨年の11月に安藤佳香先生から送っていただいた『日中・中日共同尼雅(ニヤ)遺跡学術調査報告書』(佛教大学アジア宗教文化情報研究所・佛教大学ニヤ遺跡学術研究機構編,2007)
http://fry.asablo.jp/blog/2008/01/02/2542183
の元となる様な本の様な気がする。
 小島先生は、念仏の先生だけではなくて、こうしたシルクロードの学術研究や最近では、四川省大地震の被災者の為の寄付等、幅広く活躍されているので、凄いと思う。

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