東京債権回収・特別清算2010/08/02 13:30

 サービサーなんて、住宅ローン産業の破綻処理業者というか、ハイエナみたいな怖い職業だと思っていたが、良く考えてみれば、気の毒な職種だと思う。

 銀行にとっては、住宅ローンは、一番リスクが少ない融資事業だが、それでも万が一のリスクは、このサービサー言われる会社に請け負わせて、自分達は、美味しいところだけをとっている。

 しかし、これだけ破綻が増えるとサービサー自体の経営も厳しくなる。今日の倒産情報に東京債権回収という企業の倒産記事が掲載されていた。

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東京債権回収(株)(千代田区九段北、設立平成10年10月、資本金5億円、従業員100名)は特別清算を申請する方向で関係先と話し合いを進めていることが分かった。日本で最初に法務省から認可を受けたサービサー(債権回収会社)。銀行及び銀行系ノンバンクから不動産担保付不良債権の買受を行うほか、貸金業者及び倒産処理に入っている企業の金融債権なども扱い、平成19年12月期には年商45億300万円をあげていた。しかし、資金調達環境悪化や不動産市況低迷による担保不動産の流動性低下などにより20年12月期年商は41億8500万円に減少。21年12月期も不良債権の格付、リーマン・ショックなどによる投資家動向の変化により年商は17億6700万円に落ち込み、43億2100万円の最終赤字を計上していた。
 また平成22年1月21日には法務省から内部統制・法令遵守態勢構築の不備などにより債権管理回収業に関する特別措置法第23条の規定に基づき、業務改善命令が出されていた。これを受け2月22日には法務省に業務改善報告書を提出。業務改善に取組んでいたが、業界環境は好転せず、業績回復の見通しも厳しいことから今般の事態に至った。

 結局、政権交代で、債権回収業に対する政府の見方が、変化した。大手銀行の「縁の下の力持ち」としての存在のサービサーの業務については、ある程度、大目にみられていたところがあったが、債権回収業に関する特別措置法の厳格適用に方針が変わった為に、ただでさえ厳しい状況になっていたのが、一層厳しい結果を招く様になった。

 日本の代表的なサービサーの倒産は、今後の住宅関連産業の方向転換の可能性を示唆している。住宅ローン代金決済の大部分はローン支払いで、銀行と保証会社の連携プレーであったが、不良債権の売却が実質、困難になっている中で、これまで以上に融資審査が厳しくなる可能性も出てきている。また、貸金業法改正の結果、一般ローンの融資金額の規制も強化し、ローンの支払い不可能になる債務者が大幅に増える可能性も出てきた。

 ローン破綻の時には、任意売却を行うのが得策とされているが、この場合は、仲介業者が債権者(サービサー)との交渉による。サービサー自体には、担保・抵当物件の現金化の手段を持っていない為に、住宅業者に依存せざるを得ず、「任意売却を請け負います」という不動産業者が増えている。場合によっては、一般物件の売買手数料よりも儲かるので、非常に積極的である。

 サービサーの破綻要因は、住宅ローンが破綻して、債権回収業務を引き継ぐ訳であるが、競売や任意売却でも貸倒れ損害額全ての回収が困難になっている実体がある。どんどん土地や建物資産価値が下落しているので、借り手には、借金(返せない借金)、貸し手には、貸倒の損失のみが残ってしまう状況がある。

 貸金業法の改正には、住宅ローンは、含まれていない。政府系金融機関を含めて、住宅ローンの貸付は、むしろ奨励しているし、住宅ローン減税とか、リフォームやエコ住宅の場合には、ポイント還元等、自動車購入と同様に大きな恩典をエサに善良な国民の住宅購買意欲を刺激している。

 フラット35等をみていても、一般のサラリーマンでも一流企業に勤務している人は、そこを勤め上げれば、辛うじて、返済可能なものなのに、これを「年収200万の方でもローンを組んでられますよ。」とUFJの営業マンが言っていた通り、日本の経済階層社会の下層に位置する身分の人間でも年齢と勤続年数次第で、一流サラリーマンと同額のローンを組むことが出来るのが、今の日本社会である。

 今後、日本経済は、欧米の底なし沼の様な不況に巻き込まれて、下降線を辿る一途。奇跡的に欧米経済が立ち直っても、いわゆる「ジャパンシンドローム」なので、日本経済だけが地盤沈下を続ける可能性もあるので、雇用関係の改善や給与水準の上昇等は無理で、一層の人件費カットやリストラがこれからどんどん増えるので、ローン破綻はこれからも続出するだろう。

 サービサー企業に尻ぬぐいをさせて、悪者呼ばわりをする政府や世論。でも、この様な破綻処理企業の役割は、むしろこれから一層必要になってくるとみられる。しかし、債権といっても、回収可能な債券なので、回収不可能な債権が増えてもどうしようもなくなる。

 結局、政府が住宅ローン制度の見直しを行い、融資基準、審査基準について一定の制限を実施すべきだ。

 国民には、分相応の生活をしてもらう以外にはない。

 例えば、購入後5年後、10年後の資産価値を前提に、破綻した場合の売却回収可能な額を試算し、これを基準に貸付金額の上限枠を決定する等、破綻が生じることを前提にした住宅ローン制度に変えていかなければ、借り手である国民サラリーマンも、貸し手の銀行や債権会社も生き残りが厳しくなるだろう。

 ノンバンクローンも銀行ローンも本質的は、一緒である。

 破綻が続出して、「徳政令」を出しても、それは、日本経済、ひいては、国民の首を絞めるだけである。

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