「いらねぇなら売らねぇよ。」2011/01/27 14:26

 今週に入って、畜産飼料の製造業者の倒産が報告された。

 月産5千屯規模とこの業界では、小規模であるが、地域の養鶏農家や牧場等に飼料を供給しており、地域に貢献されている企業だった。

 大切な原料のとうもろこしの値上がりが著しく、エタノール需要が爆発する前は、とうもろこしのアメリカ産地での市場価格は、2ドル50セント程度であったのが、今や、6ドル60セントと2.5倍近い上昇となっている。

 アメリカの市場では、とうもろこしの値段がこんなに上がっても、原油先物市場の投機的高騰→エタノール価格の急騰→エタノール原料用とうもろこし需要急増→とうもろこし価格高騰の仕組みの中で、7~8ドルの水準になっても需要は減る気配はないという。

 また、畜産物需要が急騰している中国での家畜用飼料原料用の穀物や油脂原料の大豆をアメリカからの輸入する動きとなっており、日本に匹敵する量の穀物が日本以外の国に輸出されていることも価格を押し上げる要因となっている。

 バイイングパワーでは、日本は、中国に対して、経済的劣等国であり、負け組になっているのである。

 「いらねぇなら売らねぇよ。」と日本の買い付け担当者は、現地のグレインカンパニーから言われているらしい。

 「食品」と「クルマ用の燃料」との価格競合となれば、最初から話にならないのである。

 大切な私達の「食」が鉄の化け物が跋扈するクルマ優先社会の為に、犠牲になっているのである。

 こんな高い原料を買わされている一方、家畜用飼料の価格は、今年から値上げ実施となったが、前年の同じ時期の水準に比べて農家末端価格は、養鶏飼料で、6万7千700円(昨年11月)で、前年の水準に比べて98%程度と低い水準に抑えられている。

 飼料製造業者では、畜産農家や消費者の為に出来るだけ、低い値段で飼料を供給して来たが、これ程までに価格が上がっては、どうしようもなく、借金をして、続けているところも多い。

 一番問題なのは、より体力がない零細の飼料企業の経営が危うくなるので、こうしたメーカーでは、地鶏や地卵等の地産地消に密接した畜産物を生産する農家の為に、親身になって飼料を毎日供給して来たが、こうしたところがなくなると、大企業→企業養鶏(畜産)の資本投下型の畜産業のみが生き残る様になり、それも仕方がないことだが、地域密着型の消費者の安全、安心に応えることが難しくなっている。

 大企業は、採算に合わないことはやらないので、国民の食の安全と安心がなおざりになる可能性もある。更にTPPともなれば、国内での飼料製造や畜産物生産自体が無くなってしまう懸念さえもある。

 豊橋で鳥インフルエンザが発覚して、大変なことになっているが、この地域でも比較的飼養規模の小さい畜産農家が多く、移動制限措置で、畜産物の出荷停止等の損害が出れば、当然、飼料代も払うことが出来ず、飼料の販売業者、製造業者は泣き寝入りをする以外にない。

 畜産農家には、助成が行われるが、それでも廃業が増える懸念もある。しかし、飼料業者・業界には、こういった場合への救済措置は、ほとんどなされていないのが現状で、私達の食生活は根幹から崩れようとしている。

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