ソビエトカメラの奇跡的珍品・始祖鳥ゼニット(1)2008/12/21 14:43

FZ28で撮影(コレクションモード)
 パルナックタイプの1眼レフを考案・開発・実用化したのは、ソビエトだけではないだろうか。

 このZENIT-C(ゼニット・エス)は、ソ連KMZ社が最も初期に開発した一眼レフである。パルナック型ライカ(LAICAⅡ)のコピーであるゾルキー1をベースに、ミラーボックスとペンタプリズムを搭載し、現代でも珍しい超小型軽量1眼レフを開発したのである。

 最初の型は、1955年頃でゾルキーCと同じ頃に開発されたとみられ、この時代にこの様な1眼レフが出現したのは、ちょうど、中生代白亜紀に始祖鳥が登場した様なものである。(このカメラは、1958*****というシリアル番号から、1958年頃に製造されたものとみられる。)

 まさには虫類と鳥類とのミッシングリンクというべき特徴をこのカメラは備えている。

 まず、マウントは、L39マウント(ライカLマウント)とほぼ同じ形状のM39マウント(ゼニットマウントと呼ばれている)を採用している。但し、フランジバックが、45.46㎜でライカLマウントの28.8㎜に比べて16.66㎜長くなっている。これは、ミラー及びペンタプリズムで光路(こうろ)が折り曲げられるので、それだけの長さがいる。

 つまり、形だけでは、Lマウントのレンズを装着出来るが、マクロ撮影等にしか使用出来ない。また、逆にM39マウントのレンズにゲタを履かせると、パルナックライカでも撮影することが出来る。

 実際に、このカメラ用に開発されたゼニットマウントのインダスタール50㎜は、Lマウント用とゼニットマウント用があるが、どちらも、上半分の筐体は同じで、Lマウントは、ピント検出用リングが入ったゲタを履かせており、工場の生産ラインを共有出来る様になっている。(この辺がソビエトらしい)

 デザインは、ミニサイズで、最新女流一眼LUMIX-G1と同じ位のサイズで重さはこちらの方が軽い。正面のルックスは、実に可愛らしく、上から見たら、NIKON-Fの様な皮貼りのペンタ部のカバー、まん丸のファインダーが良い。

 NIKONみたいと言われるが、こちらの方が開発年代は、ずっと前。NIKONは未だレンジファインダーの時代であったことを考えると凄い先進性だと思う。

 軍幹部上面の操作機構は、ほぼゾルキーCと同じ。巻き上げ機構も同じ。フラッシュ連動レバーもあるが、このデザインでは、アクセサリーシューは搭載出来ず、手持ちのストロボ等を使用する必要がある。

 操作感は、やはり、良いとは言えない。

 まず、巻き上げがガサガサ言う。これは、フィルム巻き上げ+フォーカルプレインシャッターのチャージ+ミラーの下げ戻しバネの3種類の圧力がかかっているので、当然のことである。ミラーが下げ終わると急に巻き上げが軽くなるので無事にミラーが上がったことが判る。

 機構部も非常に複雑であり、故障しやすい。この個体もミラーを引き下げるリボンが切れていたので、分解修理をした。さすがに、このカメラの分解は、大変な思いをした。コンタックスタイプと双璧の複雑な機構を持っている。

 ファインダーは、年代が経過しているので、綺麗とは言えず、ただの磨りガラスなので、ピントを確認するのが難しい。また、絞りもマニュアルなので、ピントを確認してから絞りと、シャッター速度を決定しなければならない。つまり、F11では、ファインダーが暗くて見えないからだ。

 被写体の構図を決めて、シャッターをレリーズすると、画面が真っ暗になる。これをブラックアウトという。当時の初期の一眼レフは、旭光学(ASAHIペンタックス)が、クイックリターン方式を発明するまでは、このブラックアウトが大きな欠陥であり、レンジファインダーカメラに比べての優位性を確立出来なかったのだ。

 まさに一眼レフ黎明期の貴重な機種である。
 写真は、FZ28のマクロ(コレクションモード)で撮影した。
 なかなか撮しやすいと思う。

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