意外な落とし穴2009/05/04 21:15

 仏教芸術コースでお世話になった安藤佳香先生の全著書、全論文を読破したと思っていたら、意外な落とし穴が見つかった。

 それが、京都造形芸術大学比較芸術学研究センターが刊行している『Aube』の02号07年8月発行に収載された論文で「装飾と思想の関わり」、『「宝相華」という美しい名の唐草について』の2点であり、早速、AMAZONに昨日発注、今日の夕方には配達されて来た。

 先生の論文目録については、インターネットのデータベース等を使ったが、これらには、最近発行された雑誌論文等が反映されていないので、十分注意する必要がある。(国立国会図書館の作成している雑誌表題目録オンラインデータベースにも、08年の時点では収載されていなかった。)

 この雑誌には、井上正先生の「仏教芸術の中に民族思想を読み取る」も収載されている。こちらの論文は、私が佛大の仏教芸術コースで学んできたことが、完結かつ完全な文章で見事にまとめられている。これから仏教芸術を学ぼうとする人達には、是非、お奨めしたい論文である。この中で、「霊木化現仏」に加えて「霊石化現仏」が触れられている。これは、ユニークで初めてみる観点である。

 朝鮮半島の慶州にある石刻仏が例に挙げられている。樹木と同様に岩石や崖にも自然の霊力が宿るという信仰が仏像彫刻に結びついたものである。この慶州の線刻仏に非常に似た事例が、私の近所の能勢剣尾山の大日如来磨崖仏にみられる。岩の形をうまく活かして大日如来造が彫られているし、この大日如来を中心に胎蔵界の宇宙の配置が自然石等を利用した山岳仏教遺跡と融合しているのである。この地域には、百済から渡来した日羅上人の伝承があり、朝鮮半島の霊石化現仏の信仰が伝播したのではないだろうか。

 安藤先生の2点の論文は、これまでの講義や講演、著書、特に『佛教荘厳の研究 グプタ朝唐草の東伝』に述べられている内容を完結にまとめたものであったが、長い著作を読むよりも、この方が判りやすい点もある。また、この雑誌の価格は、1,800円なので、数万円する佛教荘厳の研究を買えなくても、井上正先生や安藤先生の考え方の概略を知ることができる。

 この本が届いた時、母親にみせたら非常に興味深そうに読んでいた。若いときに、私たち親子の生活を支える為に、内職で、泉南の毛布屋さん向けに、毛布の図案をアルバイトで描いていた。宝相華文等も良く知っており、「こうした模様の由来について初めて知ることが出来た」と話していた。

 私たちと「かざる」という行為、そして、文様は、密接な関わりを持ち、それぞれの民族や地域の生活文化のエッセンスが表出されているのではないだろうか。

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