家庭用普及型望遠鏡での天体写真撮影の機材条件2007/04/05 09:35

IXYDIGITAL70・でフラッシュ撮影。

 今日は、私がこれまでの経験に基づいてまとめた家庭用小型望遠鏡での天体写真の撮影のコツについてまとめてみた。
 1970年代後半に私が使用していた機材は、ミザールの10cm反射赤道儀(手動ガイド・経緯台として使用)、ペンタックスのマニュアル一眼レフ、カメラアダプター(コリメート・直接焦点)であった。
 この機材では月面のクローズアップが限界で惑星の模様は撮影できなかった。当時のまともな惑星写真を撮れる条件としては、口径150~200㎜の望遠鏡・自動ガイド、ミラーアップ式一眼レフが必要であった。一眼レフは、実は惑星写真撮影に不向きである。ミラーの跳ね上がる反動で望遠鏡が揺れて写真がぶれてしまうからだ。
 それから30年後、114ミリF9反射経緯台という高校生時代と変わらない機材で撮影しているが、私のレベルでは、昔では考えられない程の良い写真が撮影できる様になったと思う。当然、現在、200㎜では、30年前の口径1000㎜クラスのプロの天文家が撮影していたレベルの写真が撮影できる様になっている。QカムとRegistaxによる処理を行う事で、火星の表面をハッブルや探査機で撮影した画像を2段階程度、フォーカスを甘くした程度の写真をアマチュア天文家が撮影可能になっていることは驚異的だ。いまや木星の衛星の表面模様さえも素人が撮影できる時代になっている。
 それにしても「普通」の愛好家が楽しめる程度の写真が手軽に撮影できる様になったことはありがたい。
 しかし、どうやらそれには条件がある様だ。望遠鏡とカメラについて考えてみよう。
◎望遠鏡の条件
①光学系がそれなりにまともである事。(口径よりも精度が重要でこれが悪いとボケた写真になる。)
②光軸修正が正確に行われていること。(特に反射ニュートン式の場合は、ユーザーが確認する必要がある。)
③微動つき堅牢架台(経緯台・赤道儀を問わず、ガタがなくて丈夫であること)願わくば、自動追尾が可能であること。
④ファインダーが正確で見やすい事。
⑤持ち運びがデキル事。
 以上の5条件だと思う。特に光学系は最近、生産されている中国製の低価格反射は、放物面ではなくて球面鏡である。当然、球面収差が生じるのであまり、Fが短いものは、使えないと思う。光学検査や品質管理がされているメーカーの製品を選ぶ。架台は、最近、経緯台式でまともなものが出てきて望ましい。私は、ビクセンのポルタ経緯台を使用しているが、手動ガイドながら、非常に丈夫で長焦点の望遠鏡で見ても殆ど振動を感じない。最近では、ドブソニアン式の安くて口径が大きな望遠鏡が出てきているが、微動装置がついていない場合には、不便だと思う。
◎デジカメの条件
①フィルターがねじ込み式で入り、口径が43㎜もしくは、52㎜の標準形であること。ビクセン製のカメラアダプターが装着可能である。そうでない場合には、一眼レフTリングやユニバーサルアダプタが使用されるが、前者は、ミラー振動で撮影には不向き、後者は、光軸が狂いやすい。
②レンズ光学系が優秀で手ぶれ補正機能がある事。私の場合は、PL20㎜接眼で低倍率で惑星を視野に入れてそれからズームアップして撮影しているが、光学ズームが4~5倍程度で後は、デジタルズームと言う機種は、画像がてき面に悪化する。光学系による12倍ズーム機能を備えたものが良い。また、ピントの正確さも重要である。マニュアルによるピント補正もしくは、パンフォーカスが可能なもの。
③ISA感度が400以上、また、高感度時に画面が粗くなったり、色班が少ないものを選択する。
④タイマー機能(もしくはリモコンレリーズ)、連写・ムービー機能がついているもの。連写では、出来れば数十枚が短時間で撮影できるもの。ムービー機能については、毎秒30コマ、AVIファイル方式、ズーム撮影が可能なもの。
⑤液晶以外に電子ファインダーがついており、視度補正可能なもの。カメラを装着したときに電子アイピースの感覚で使用できるもの。液晶モニターの場合は、可変アングルが可能である。
⑥バッテリーの持ちが良くて軽量である事。
 以上の6つの条件が当てはまる。実際には、フィルターが装着可能なデジカメ自体が少なく、カシオのEXP505やパナソニックのFZシリーズに限定される。手ぶれ補正機能は案外効果がある。固定撮影の場合、惑星が日周運動で動いていくが、ある程度のブレを補正できる。FZシリーズの場合は、電子ファインダーがついている数少ない機種であるが、液晶モニターが固定式なので、やや不便だが使えない事はない。

注意!!!!!!
 写真は、ビクセン製のカメラアダプターをFZ7に装着したところ。フィルターアダプターを介さずに直接、アダプタをねじ込む事が出来る。但し、くれぐれも注意して欲しいのは、ズームしたレンズの先端がアイピースの見口に当たれば、レンズにダメージを与えるので、十分な間隔がある様にねじ込みを調整する事である。