砧打てばほろほろと星のこぼれける2012/10/24 21:09

砧打てばほろほろと星のこぼれける 明治27年

子規は砧の句をいくつか詠んでいる、その中で、この句にニュアンスが近いような。

露ほろりほろり砧の拍子かな

「ほろほろと」、「ほろりほろり」と似たような擬態語。
僕は砧打つ音を聞いたことがないので、果たして、どんな感じか判らない。

子規らしい感性に溢れた句。
ちょうど今頃は、夜半にオリオン座が南中して、冬の星座を楽しめる時期に入ってきている。じっと星を見上げていると砧の音が聞こえてくる。それを聞いていると、満天の星が落ちてくる様な感じがするのだろう。

そういえば、満天の星にも最近は出逢ったことがない。
本当の星月夜をみたことがない。

俳句詠む資格ないな。

貧乏句と子規2012/10/23 21:18

貧淋し喰えぬ木の実の落る音 明治31年

子規は、山ほど、貧乏の句を詠んでいるが、これは傑作である。季語としての木の実の本意、しれは、淋しさであるが、それを身にしみる貧乏の寂しさを結合して、この様な面白い句を作っているところにみどころがある。
以下は、子規の貧乏の句を全部抽出してみたもの。


春の貧乏

初牛に貧なる里の幟哉
いつまても貧しき声の蛙哉

◎春の貧乏の特色(-_-)
回りをみて落ち込んでいる所に特色がある。

夏の貧乏

にきやかに貧乏村の蚊やり哉
湧きあがる貧乏村の蚊遣哉
蝙蝠や貧乏町の夜学校
貧しさや葉生姜多き夜の市

◎夏の貧乏の特色(^^;)
楽天的である。

秋の貧乏

貧村の秋の山吹花咲きぬ
貧に誇る我に月の如き寶珠あり
名月に貧女がつゞれのふしま哉
貧乏を見せじと人の魂祭
貧厨や柚味噌殘りて鼠鳴く
貧交は秋の扇を參らせん
裏店や貧乏見ゆる秋のとばり
鳩吹の貧しき里を通りけり
馬追の我貧乏を鳴く夜哉
目をぬすみ小鰯ひろふ貧女哉
北海の鮭あり厨貧ならず
貧厨の光を生ず鱸哉 動物
木槿さくや寺のうしろの貧乏町
貧しさに菊枯し瓶の梅もとき
貧しさは菊枯れし瓶の梅嫌
貧淋し喰へぬ木の實の落る音
破れ盡す貧乏寺の芭蕉哉
貧村に寺一つあり破れ芭蕉
貧乏な八百屋車や芋大根
夕顔の貧に處る絲瓜の愚を守る
嵐雪の黄菊白菊庵貧し
鷄頭ヤ絲瓜ヤ庵ハ貧ナラズ
清貧の家に客あり蘭の花

◎秋の貧乏の特色(-_-)
貧乏感が季語にあるとおり身にしみる。心の貧乏でもある。

冬の貧乏

金性の貧乏者よ年の暮 時候
貧乏な村をとりまく冬田かな
隣住む貧士に餅を分ちけり
貧乏は掛乞も來ぬ火燵哉
貧しけれど雪車と雪沓と馬二匹
皸や貧に育ちし姉娘
貧血の君にさそはれくすり喰
貧をかこつ隣同士の寒鴉
から鮭や市に隱れて貧に處す
水仙や貧乏徳利缺茶碗
二三本葱買ふて行く人貧し

◎冬の貧乏の特色(>_<)
貪欲になる。空腹で欲が刺激される訳。

新年の貧乏

貧乏の正月はうしさりながら
蓬莱に貧乏見ゆるあはれなり
福引のわれ貧に十能を得たり
福壽草貧乏艸もあらまほし

◎新年の貧乏の特色
心が貧しい。けちくさくなる。