高松塚の彩色壁画発見当時の貴重な資料を収録 『書評』第126号2007/04/10 23:16

『書評』第126号(関西大学生活協同組合『書評』編集委員会編)

 私が関大の学生時代も『書評』は、あの埃っぽい段々畑の様な階段に囲まれた関大グラウンドの下手にあったコンクリ打ちっ放しの殺風景な生協の建物の片隅に乱雑に積まれていた。
 殆ど読んでいる学生もいなかったと思う。
 4月8日に国文学科の同窓会に出た待ち時間、キャンパスをうろうろしていた時にこの懐かしい本というか冊子が目にとまり、数冊をリュックに入れた。
 読後、一番印象に残ったのは、『書評』第126号である。
「特集3 あるいてみればわたしたちのエコキャンパスへ 関大千里山キャンパスの大木から」と言う記事がまず目にとまった。
 私たちが何気なく「大木」と読んでいる大きな木、これが「大木」としてどの様にまず定義されているのだろうか。幹の一番大きな部分の周囲長が200㎝を越えると言うのが条件。
 キャンパスが存在する吹田市には、大木が420本あるが、そのうち、45本が関大にあり、10%強となっている。関大のキャンパスは吹田市の1%弱の面積しか占有していないので、平均の10倍以上の密度で大木が分布している事になる。そのうち、9本立ちのクスノキと言うのがあって、これが一番巨大らしい。
 日本一の大木は、鹿児島県の蒲生の大楠で幹周りは、2422㎝に達する。屋久島の縄文杉の最大のものの幹周りは、1610㎝で意外な事に全国で第12位との事。こうした雑学が得られて非常に楽しい。
 次いで興味を持ったのは、「図像で読み解く魔女の世界六」でこれも凄く面白い。魔女狩りで収監施設から魔女の判定方法、収容施設、尋問(拷問の方法)、器具等が詳細に記載されている。『拷問の歴史』(高平鳴海と拷問史研究班著 新紀元社)及び『図説拷問全書』』(秋山裕美著 ちくま文庫)、『摩道具事典』(山北篤著 新紀元社)が一応、この分野では、重要文献と言う事になるが、特に、拷問道具や尋問方法については、これらの文献に記述されていない情報までもが連載記事で紹介されている。それも、図解と当時の担当官や悪魔払いの司祭による日記や公文書等から学術的に引用されている。恐いが、ついにその世界に引き込まれてしまう。
 しかし、最大の資料としてあげられるのは、「特集4 追想網干義教先生」である。高松塚の彩色壁画が関大の学生達によって発掘・発見された当時の状況が詳細に記されている。一番、感動的だったのは、やむなく高松塚の管理が文化庁に移管される事になり、古墳石室に最後に入れる時に、発掘に携わり、悔し涙に暮れる学生一人一人に「しっかり、目に焼き付けておくんだ。」と声をかける部分である。
 当時の発掘の模様については、『書評』にも網干先生が文章が書いておられ、それらも全て再録されている。また、インドの祇園精舎の後とされているインドのウッタル・プラデーシュ州にあるサヘート遺跡の発掘調査の記録写真等も収録されている。
 日本考古学史を見る上でもこれらは、重要な資料として位置づけられるのではないだろうか。
また、長文になってしまった。

疲れました。
どうやら潰瘍になってしまったらしく胃が痛む。ガスター錠を服用してから休む事にする。