講談社「週刊 日本の仏像」 ― 2007/05/30 09:34

講談社「週刊 日本の仏像」全50号5巻の週刊百科が創刊された。
「どうせ、今までの様な古い写真を使用した本に違いない。」との先入観を持って書店で立ち読みした。
第1号は阿修羅であるが、写真が最近の写真家による撮影なのか新しくなっている。
前にブックレビューで紹介した学研の「日本美術全集」の興福寺阿修羅の部と比較してみると一目瞭然。
先ず、気づかされる事は、色調が異なると言う事。学研版の色は、阿修羅の顔が紫がかっている。講談社の場合はやや明るく軽い目であるが、微妙な朱色の陰影がうまく表現されている。写真の解像度も高い。デジタルカメラによる撮影かもしれない。
頭部は、学研版が2方向からの撮影にとどまっているが、講談社の方は4方向から撮影。更に全身像、足元、手、腕等の細部描写もある。
また、阿修羅と同様に守護仏の図像も紹介し、阿修羅像が誕生した仏像彫刻史的な背景も判る様になっている。
また、創刊号のおまけが「お役立ち仏像ハンドブック」が綴じ込まれている。この編集も判りやすく良い。例えば、手元の「日本仏像事典」(吉川弘文館)や「仏像図典(吉川弘文館)等は解説が詳しいが白黒画像。こちらは、カラーで、これまで秘仏とされて来た生身仏の清涼寺の釈迦如来像等も現色で実物を見る事が出来る。この釈迦如来像だけを扱った号も発刊される予定。
全刊揃えると2万円を超えてくるが、定期購読を申し込む事にした。最近の技術革新で仏像の画像も精細度を増した撮影が可能になっている事。読者が、戦前・戦後の教育を受けて、仏教や仏像についての暗黙のご了解としての知識を持っている世代から、全く知らない、欧米人と変わらない予備知識や先入観しか持っていない世代に切り替わる中で、仏像写真全集も刷新の時代に来ているのかもしれない。
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