あり余る穀物、真実を伝えない企業・マスコミに騙される消費者2008/05/16 22:32

 最近は、世界的な食料不足、穀物高騰とパンやマヨネーズの値上がりなど、私の仕事に関連することが日常的に話題になって憂鬱この上ない。
 パンは小麦粉、牛乳や肉、卵等は、配合飼料で、その原料の6割方は、米国産とうもろこしが占めている。
 米国産とうもろこしの価格は、ほんの数年前は、1ブッシェル当たり250セント(この単位は、穀物の単価計算の最小単位であり、カサを表す。屯に換算すると98ドル程度であったのが、現在は、1ブッシェル辺り600セント、トン換算で240ドルと2.4倍に膨れあがっている。
 更に、アメリカで収穫されたとうもろこしは、メキシコ湾岸で大型船に積み込まれて、パナマ運河を通って、太平洋を日本に向かって航海してくる。これらの運賃も原油価価格の高騰で大幅に上昇しており、日本の港湾に到着した大型船から直接受け渡しされる価格は、ドルベースで、トン当たり420ドルにも膨れあがる。
 まさに滅茶苦茶である。
 こんなに値段が上がったのは、アメリカのとうもろこしの価格決定を左右しているシカゴ商品先物取引所の価格であり、日本向けのとうもろこしの輸出価格もこれで値決めが行われる。
 マスコミ報道で価格が上昇した原因は、大量のバイオエタノールが地球温暖化対策と不足する石油代替で必要だからという事になっている。
 でも、実際には、2007年産のとうもろこしの収穫量は市場2番目の大豊作であり、品物が不足して価格が上がった訳ではない。08~09年産は、大豆の市場価格が高騰したので、大豆の作付面積が増えて、とうもろこしの作付面積が減少する。つまり、減産ということになるが、それでも図の通り、前年度の繰り越し在庫を含めた生産量は、なんと121億ブッシェル(約3億734万トン)を越えており、これに繰り越し在庫を含めた供給量は、135億2300万ブッシェル(約3億4350万トン)に達し、エタノールを含めた総需要量127億ブッシェル(約3億2、260万トン)を上回っている。前年に比べて幾分余裕はなくなるが、市場価格が適正水準から3倍近く高騰するだけの根拠はない。
 つまり、とうもろこしの価格は、エタノール需要が急増したから高騰したのではなくて、アメリカの経済が停滞する中で、サブプライムローン等で運用されていた投資マネーがとうもろこしや大豆、小麦等の農産物取引に流れ込んで、極めて射倖性の高い市場が形成されためである。
 利潤を追求するアメリカ資本主義、ところが、実質的な企業の業績は伸びないので、企業の手持ち資金を株式や商品先物市場で運用して利益を得る以外にない状況がこの様な穀物相場の高騰を引き起こしたのである。
 その相場の乱高下の結果、上昇した為で、例え、エタノール等の問題がなくても、相場は高騰しただろう。
 それは原油相場もそうで、実際には、こんなに価格が高騰する根拠は経済学的にみてあり得ない。
 つまり、賭博的な用途に穀物相場が使われた結果、私たちが日常、食料としているとうもろこし、小麦、大豆等の農産物の価格が軒並み上昇してしまった。
 このことは、アメリカ国内でも大きな問題となっており、この様な穀物投機相場を止めさせるべきだとの意見も出ている。
 また、エタノールの需要もアメリカでは伸び悩んでおり、結局は、アメリカ人は高いガソリンを買って車を運転しているのが実情。
 バイオエネルギーやエタノール政策の見直しと穀物相場に実需者以外の投機的目的での参入を阻止することで、現在の世界中の貧しい人達の飢餓を防ぐことが出来る。
 つまり、資本主義経済のもはや末期的とも言える状況が、この様な異常な投機相場を産み出していることを少しは、日本のマスコミも報道してもらいたい。

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