この人が、アダ・マウロと共演してTVに出ていたのが印象に残っている2010/02/22 00:01

 ジークフリートベーレント(クラシックギタリスト)がソロを演奏しているロドリーゴのアランフェス協奏曲とカステルヌーボ・テデスコのギター協奏曲をカップリングしたLPである。

 せっかくレコードが聴ける様になったので、梅田第1ビルの中古レコードショップの店頭のバーゲン籠にあるものをゲット。価格は、200円。

 再生時のA面に針飛びというか前に進まない欠陥があったが、中性洗剤を染みこませたティッシュでそっとその箇所を拭ったら、綺麗に再生出来る様になった。カビの為らしい。

 オーケストラは、ラインハルト・ペータース指揮、ベルリンフィルハーモニーである。ペータースは、三流の指揮者だけれどもオケはベルリンフィルなので、こんなに一流のオケがバックについたアランフェスのレコードは少ない。

 ジークフリートベーレントは、1933年に生まれて、1990年になくなった割と短命なドイツのギタリスト。ベルリン生まれの生粋のドイツ人である。

 演奏スタイルは独特である。ギターの構え方からしてスペイン流の正統ではなくて、右足に胴を乗せて、ネックよりのギリギリのところで、小さく弾弦する。

 楽器は、リヒャルト・ヤコブ・ワイスバーガーというこちらもドイツであるが、ヘルマン・ハウザーの楽器が純ドイツ風(セゴビアは何故か、この作家の楽器を戦前は愛用した。)で、あったのに対して、この人の楽器は、サウンドホールは楕円形でしかもリュートの様なロゼッタが刻まれている。ヘッドにも細かな木彫がある。

 これが、スペインとはかけ離れたどちらかというリュート風の響きである。

 アランフェスも非常に早いスピードでしかもスペイン的なリズムや誇張はなくて、オルゴールを弾く様に淡々と弾き進む。第1楽章は今ひとつだが、第2楽章は、独特だが、それなりに味わいがある。但し、芸術的に優れているのは、テデスコのギター協奏曲であり、これは、南欧というよりも中欧風の正統なスタイルであり、味わいと気品がある。

 しかし、この人を持ち味を聴くならば、やはり、バッハとかヴァイス、あるいは、ジュリアーニ等の独奏曲である。前にも書いたかも知れないが、イエペスの爪音がするバッハよりも、ベーレントのバッハの方が、本格的な感じがある。

 日本民謡等の編曲もギターに残しているが、これは、ついて行けない。現代曲も色々と演奏しており、こういった意味で、今の演奏家よりも前衛的である。

 ギターの岡本太郎といったところか。異様な水ぶくれで不健康な体躯、陰気くさい眼鏡をかけた顔、手のひら等は、は虫類の様に冷たい感じがする。

 右手のフォームも殆ど手のひらが上にむいていて、ギター教師が、「その様なフォームでは、セゴビアトーン出せないよ。」と矯正する様な感じ。

 リズム感というかアクセントも独特で、チェンバロやクラビコードの様な感じ。

 この人が、アダ・マウロと共演してTVに出ていたのが印象に残っている。「ウルチマ・ラーラ」というギター伴奏付きの朗読劇であり、これは、恐ろしい程、前衛作品であった。

 アダ・マウロは西沢学園のCMにも出ていない頃で、カメラ雑誌にLAICAスナイーパーという超望遠レンズでライフルの様な引き金を引くタイプのカメラを持っている写真が印象に残っている若手の女優さんだった。

 こんな演奏の記録、LPでしか手に入らないし、200円だったら安いと思う。