文化庁予算2006/07/10 12:34

昨日まで、佛教大学(通信制)のデジタルアーカイブのスクーリングに出席していたが、文化庁の文化遺産保護関連の平成18年度予算について、講師の先生から全体で約で1016億円で前年に比べて9億5700万円の減額となったとの説明があった。

予算項目は、◎文化芸術立国プロジェクトの推進、◎文化財の次世代への継承と国際協力の推進、◎文化芸術振興のための文化拠点の3項目となっており、その内、文化財の次世代への継承と国際協力への推進は、347億8,700万円で前年に比べて2億9,300万円の減額となっている。更にその内訳では、文化財の保護・整備活用については、346億3,200万円で前年に比べて3億1,100万円の減額となっている。

また、これらの文化財を展示する美術館・博物館活動の推進については、275億9,500万円で前年に比べて14億7,100万円の大規模の削減が行われている。

文化財の次世代への継承の予算では、今年度は、高松塚問題への対策費にかなりの部分が割り当てられており、他の文化財の保存・修復作業への予算減額で実際の活動にも影響が出てきていると言う。ましてや、美術館・博物館活動資金の大がかりな減額の影響も大きい。

最近での博物館の職員には、博物館学芸員(常勤・非常勤)以外に、デジタルアーキビストと言う職種を置くところも増えている。文化財関係の予算が一斉減額となる中で、デジタルアーカイブの事業については、国のe-ジャパン戦略と連携しており、重点的に予算が配分される動きとなっている。

デジタルアーカイブスへの取り組み状況によって、行政からの資金助成が厳しく審査される状況となっている。デジタルアーカイブは、ただ、単に文化財の画像等をデジタル保存するだけでなくて、そのデータの加工性・移動の便利さの特性を活かして、幅広い利活用に供される点で行政の高い評価を受けている。

しかし、同時にこれまで地道で時間がかかる伝統的手法での修復活動等の努力を続けて来た活動や美術館、寺院への文化財保護助成が削減される可能性も出てきている事も事実である。

文化財の保存性とデジタルアーカイブは、必ずしも結合しない。復元作業に分析された情報や研究成果が活用できる等のメリットもあるが、アーカイブスのデータベース自体の信頼性は、脆弱だ。デジタルメディアの保存面での信頼性については、数100年、1000年という保存耐え得る手法は、開発されていない。この為、5~10年単位でのメディアコンバートが必要になってくるが、これらを永続的に行えるだけの環境が継続すると言う保証はない。更に、急激な技術革新の流れの中で、データ自体が陳腐化する懸念もある。デジタル技術については、未完成であり、現状の手法がベストであるとは、言い切れないのである。宇治の平等院のアーカイブでは、3次元レーザーによる解析も行うが、伝統的手法による保存・修復や、写真版等のアナログ技術に並行して行われて、適宜使い分けられている。


「文化力」と行政では簡単に言い切るが、「文化」と「力」を結びつける発想こそが、日本の文化行政の不毛度を示しているのではないだろうか。特に、コンピュータテクノロジーが、「力」に結びつくというのが、21世紀商業資本主義の「信仰」となっているようだが、真の「文化」や「文化財」の価値について、私たち利用者の立場で考える必要があるだろう。