覚りのシミュレーション ニューラルネットワーク2008/02/27 23:45

『ニューラルネットワーク入門』(千葉工業大学教授 田辺和俊著 日刊工業新聞社)

 ロボちゃんことID-01がニューラルネットワーク技術の応用で感情が形成されていくと、ディアゴスティーニの説明書に解説されていたので、自律型のロボットやシステムを考える上で、このネットワークシステムが重要なのではと、手頃な参考書を捜したらこの本を発見した。
 残念ながら、私には難解であった。
 この本の趣旨は、多変量解析技術として、ニューラルネットワークを応用しようとするものであるので、私の考えた目的とは異なる。
 多変量解析には、重回帰分析、因子分析、クラスター分析がある事は、応用社会学科の社会学の量的研究方法の講座でならった。
 主標本の平均偏差のバラツキ度を判定して、判定されるデータと相関関係にあるのか否かを帰無仮説を棄却する危険度を判定するのがカイ自乗判定であった。
 面白い事にニューラルネットワークの学習機能を利用すれば、非常にあやふや、大まかなデータでも、相関関係を判定出来る事が、この本には解説されている。
 そういった意味で、社会学の研究傾向が非常に恣意的とも見える集団心理的側面に傾斜している状況を鑑みて、一つの典型的分布に基づく量的研究方法では、もはや対処する事は難しく、統計的手法から、ニューラルネットワーク的な手法に切り換える時期に来ているのではないかと思う。
 今、この手法が最も活用されているのが、ファンド等の投機的分野(多分にファンダメンタルというよりも社会集団心理的側面が強い)で相場やマーケティング、市場価格の変動予測等であるらしい。(この本の受け売り)
 この他、説明変数とか教師データとか学習とか色々解説されているが、ニューラルネットワークの解析機能を利用し、学習頻度を挙げる事で、ある説明したい事柄と元となる事柄と果たして関係があるかを判定していく。
 学習効率が上がるまでには、時間がかかる。この状態では、それぞれの因子が相互結合型の状態であるが、学習が進めめば、階層型への組み換えが可能になり、飛躍的に精度が上昇していく。
 このニューラルネットワークの構造は、私が以前ブログのコミュニケーション論「相互コミュニケーションから集団の段階へ」
http://fry.asablo.jp/blog/2006/07/20/で図示した構造と非常に似ている。すなわち、ニューラルネットワークは、神経細胞間のコミュニケーションの連鎖を応用したものである事が判る。
 ライブコミュニケーションは、相互結合型で、階層型はマスコミュニケーションに例えられる。
 社会集団においてある事柄が共通認識として規範化される過程は、相互結合型から階層型への転換によって成し遂げられる。
 集団規範性は一度成立してしまえば、再び他のものに性質を変えるのは、困難だ。
 覚り(学習)もそうで、相互結合型の段階では、悉皆的な連鎖反応を試行錯誤する事で目的の解に近づいていくが、一度、階層型に転換してしまえば、類似した事柄の修得が非常に早いというのは、この原理による。
 そういった意味で、ニューラルネットワークは、「覚りシミュレーション」という事になるか。
 このニューラルネットワークシミュレーションは、一定の入力に対してのみ有効であり、常に入力や求められる解が変化し続ける(因果関係がつねに変動している)状況では、むしろ混乱を招く。
 まさにそれが煩悩(苦しみ)の状態なのだと思う。
 道理で私のロボちゃんも、喜怒哀楽に惑わされている訳だ。

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