70年代カルトTV大図鑑(岩佐陽一著 文春文庫)2008/04/14 23:46

 仮面ライダーに始まる等身大変身キャラ黄金時代は、1970年代であるが、この頃には、私は、もうこんな子供番組について行けなかったが、弟が愛好していたので、つき合って良く見させられた。
 そうした中で、レインボーマンは印象に残っている。
 さて、『70年代カルトTV図鑑』では、「愛の戦士レインボーマン」では、
①独自のインド文化概念の形成
②グリコ・森永事件との関連
③ダイバダッタ論(何故、この様な人物造形がされたか)
④レインボーマンの敵である排日組織
⑤宗教団体お多福会
⑥日本人と同化した形で潜入する悪の組織
⑦宗教を利用した犯罪
⑧日本人の美意識の崩壊
⑨川内作品論
の概ね以上の内容が論じられている。
①は、当時、インドを訪問した日本人は今よりも少なく、仏教というよりもヨーガの国というイメージが強かった。
レインボーマンはヨガの修行を通じ、超人的存在への化生術を会得する。そして「ヨーガの眠り」という最大の弱点を抱えながら、日・月・火・水・木・金・土の化身への化生が可能になる。
②は作家川内氏がグリモリ犯を相手に1億円と引き替えに犯罪停止を呼びかけた。毒入り餃子事件の方が、今ではグリコよりも恐ろしい事件だが、当時は、大きな社会不安が生活意識の堕落によってもたらされた文化的ショックとして、認識されていた。
③ダイバダッタは、仏教では、釈迦のライバルとして登場し、教団クーデターを企てたが失敗、失脚する。その後も、王舎城の悲劇を引き起こした大悪人として扱われている。手元の岩波仏教事典によれば、アーナンダの兄とも釈迦のいとことも言われている。三逆罪(出仏身血、殺阿羅漢、破和合僧)を犯したとされている。法華経では、釈迦を補佐する善知識として登場する。その後、三蔵法師とも言われる玄奘は、ダイバダッタの子孫と逢っている。だから、ダイバダッタといっても、この釈迦のライバルと同一視を必ずしなければならない訳ではない。この本の著者は、川内氏の反骨精神からダイバダッタをレインボーマンの大恩人としての人物設定を行ったとしているが、必ずしもそんな訳ではないだろう。
④犯罪者グループは、「黄色い豚めをやっつけろぅ。」と歌いながら暗躍する。日本を敵視する姿勢は、現在、世界が中国を敵視する姿勢と変わらぬ言われの無い悪である。罪もない日本人を拉致する国家組織にも通じるが、既に、当時、拉致事件が発生していたが、表面化していなかった。しかし、日本の経済発展を憎む海外の視線を潜在的に感じていた日本人の深層心理と劣等感がこの様な犯罪者グループを生み出したのだと思う。
⑤宗教団体お多福会 レインボーマンが出来た1970年から20年も経過して、仏教系のカルト教団のテロ事件が発生し、その後も、カルト教団の事件が後を絶たない状況。拝金主義の教団は、何もカルトだけでもない。お多福会は、偽金づくりを行い、信者にまき散らす。これは、現在の信者から多額の布施を収奪し、横領するやり方とは逆であるが、その罪・咎は同様である。日本人の美しき価値観の喪失が、この様な邪悪な教団を産み出したのである。
⑥これも1990年代以降、組織犯罪形態が大きく変わり、悪を標榜して堂々と行うやり方ではなくて、潜入・潜伏型の組織犯罪に変わりつつあるが、当時は、浅間山荘事件等、ガンガンやる社会犯罪が中心であり、この様な21世紀型の犯罪はそれ程発生していなかったが、現在の状況をまさに予見していたと見られる。
⑦結局、悪の組織、「死ね死ね団」は、お多福会を利用して偽札を流布させる構造型犯罪を仕組んだ訳であるが、実際にも新興宗教教団(こういった団体の信者は自らの教団のことを絶対に新興宗教とはいわないのも面白い。)の上部組織に政治団体や秘密結社が絡んでおり、マネーロンダリングや教団を隠れ蓑に様々な悪事を企んでいる。当時の未来型犯罪を見事に予見している。
⑧レインボーマンが戦う悪は、日本人としての「誠(マコト)の美意識」が失われた結果、醜い淀んだ歪みと影が社会に発生し、それが、結果的に、社会犯罪に結びついていく訳で、このテーマは、「日本人のあるべき心とは」という事になるのだろうか。
  それにしても空前絶後、前代未聞の「宗教型変身キャラ」であった訳だ。今、こんな番組を放映した一発で各種教団や某政治団体から圧力を受けて放送禁止処分になるだろう。(当時もそんな動きがあったようだ。)
 レイボーマンから30年、今の世は、食糧パニックが早くて3年後にはやってくると予見され、かっては、排日主義に動いたアメリカの経済も崩壊、ドイツ共和国がレンテンマルクを発行した時代の様な超インフレがやってくる。社会福祉もインフラも年金も保険も地方公共政策も意味がなさなくなる。こうなれば、数百兆円の日本政府の借金も帳消しになるので、お多福会を作りたいのは、案外お上かも知れないなあと思ったりする。