大阪の古書店を探していると、『澱川両岸一覧』が販売されていた。全巻揃いで20万円位。2009/07/01 09:40

 先日、『宇治川両岸一覧』という書物を紹介したが、この「両岸一覧」と銘打った書物が幕末にかけて、大量に刊行されているようだ。

 従来の名所図会は、モノクロ印刷であり、サイズも大きく、記載も江戸時代も終わりに近づくと情報が陳腐化しており、だいぶ、飽きられて来た。

 そこで新しい企画として、カラー版(数色刷り)、ハンディサイズ、最新の景物情報の提供というコンセプトで各地の「両岸一覧」が刊行される様になったようだ。

 昨日も、大阪の古書店を探していると、『澱川両岸一覧』が販売されていた。全巻揃いで20万円位。
http://www.human.osakafu-u.ac.jp/kamigata/books/chishi/chishi_01.html

 装幀や挿絵等も『宇治川両岸一覧』にそっくり。刊記をみるとやはり、文久三年とあり、宇治川一覧と同じ時期の刊行物で、大坂の書肆である河内屋喜兵衛等の相合版。

 幕末には、出版業界もそれ程、裕福ではなくなり、また、刊行物の当たりはずれも大きかったので、相合版による刊行が中心になったようだ。伏見の船宿の風景等も面白く、結局、宇治川両岸一覧の続編(同じ川筋を南下
している。)と考えられる。

 関東では、隅田川両岸一覧が刊行された。こちらは、もっとカラフルで錦絵調。北斎の作品なので美術的に優れている。
http://www.solmare.com/cbox_jp/photo12_duplication/ehon_sumidagawa/index.htm

 『澱川両岸一覧』の原形は、文政7年に刊行された)、『淀川両岸勝景図会』が元になっているようだ。仕掛け人は、同じく暁鐘成である。

 他にも、「両岸一覧」が存在しないのか、あるいは、名所図会との比較等の作業をやってみると、近世出版・絵画文化史の以外な面を探れるかも知れない。

 面白いのは、「両岸一覧」を元に小説まで書かれており、当時の文芸・風俗の中でも、「両岸一覧」を中心にコラボレーションされていたのが面白い。

コメント

トラックバック