パソコン解説書の様な法然伝2008/11/21 09:06

『図解雑学法然』(伊藤唯真監修・山本博子著、ナツメ社、2005年)

 ナツメ社といえば、もう20年近いおつきあいになる。
 最初にお世話になった本は、MS-DOS入門で、その後は、色々なアプリやインターネット関連の書物とパソコン関連の本を中心に出しているが、この様なジャンルの本も出している。

 内容は、正統な法然上人の生涯と思想についての解説であるが、図版や編集方針は、パソコンの解説書的で概略化・図示化の手法もこうしたナツメ社のノウハウが活かされている。

 著者の伊藤唯真氏は、佛教大学名誉教授であられる。また、山本博子さんは、佛教大学大学院博士課程を終えられてから、講師などをされている。

 この本は、現在でも「法然上人の生涯と思想」という佛大の必修教養科目の参考文献として曽和先生等の講義にも指定されている。

 私、個人的には、表紙の法然さんのお顔が気に入らない。なにか道鏡とか呪術にたけた僧の面構えで、浄土宗の文化イメージである清浄感、空気感というものに乏しい。

 法然上人の御影は、鏡の御影やあしひき(漢字忘れた)御影等が生前あるいは死後まもなく弟子達によって描かれている。

 それをみると所謂、「法然頭」(頭頂の中央部が凹んでいる。)ではなくて、普通の頭の肥えたオッサンといった感じで、どことなく私の風貌に似ている。最初みた時にはギョッとした程である。

 この本は、判りやすく法然上人の生涯と思想形成の過程と開設、開宗、布教、そして、忌まわしい弾圧、他宗との対立までを網羅的に扱われている。

 出生や幼児については、梅原猛氏の『法然』等の著作を取りあげており、『法然上人絵伝』の叙述に比べて、批判的な内容となっている。そして、比叡山に入山するまでの過程はそれ程、重要視されていない。

 それ以降の中国浄土思想の影響や専修念仏を覚る過程、開宗と布教、『選択集』の叙述と内容については要領よく簡潔に見開き2頁単位にパソコンの操作の様にまとめられている。

 但し、あまりに簡単すぎてかえって判りにくいので、主要の書物の原典の後書きや解説書や他の一般的な法然伝を読む方が判りやすい。

 この本の特色としては、これらの中心的な部分よりも、第10章の「法然の遺跡をめぐって」の解説が特に重要で、法然浄土教に関連する仏閣寺院等の遺跡を辿ることで、法然上人の思想が地域文化にどの様な影響を与えていったのかを探る便(よすが)となる。

 法然上人自身は、「南無阿弥陀仏」の専修念仏が行われるところは、どこでも私の遺跡であり、寺も墓も要らないと生前述べておられたのだが。