たまにはこういった本が良いが正確を期してもらいたい2009/03/07 10:18

『源氏物語を読み解く100問』(伊井春樹著,2008,NHK出版)

 気楽に読めるクイズ物の源氏物語解説書である。こうした入門書は一般の文章で書かれているものは退屈極まりないが、この本は、クイズ形式で書かれているので、読み飽きない。

 伊井先生の文章や実際の講演では、非常に流麗・丁寧・判りやすい口調であるので、入門者に最適、女性にも人気の先生である。

 この本はそうした先生の語り口が、そのまま、文章にも「おおどかさ」として現れており、好感がもてる。初級、中級、上級と問題の難易度は上がるが、私には、判らなかったり、間違えたりした問題はなかった。

 但し、本文中で玉鬘に初めて逢う場所が石山寺となっているのは、明らかな間違いで、長谷寺(椿市)である。解答の選択枝を設定する時に間違えたと思われるが、入門者は、これが正解だと思い込むと思うんで、十分な校正をしてもらいたい。


 いよいよ千年紀も過ぎようとしている。古典文学の人気は相変わらず低い。それは、あまりにも作品が固定されており飽きられている点も多いからである。

 近世文学の場合は、相変わらず、芭蕉、蕪村、近松、西鶴、秋成、馬琴、そして読み本の幾つかに鑑賞が限定されているが、実は、この時代に出版された膨大な作品群の中で、今日、活字化されて読むことが可能な作品の全体の15~20%もなく、大方が埋もれている。

 こうした作品が全て紹介されたら、日本古典の姿は、全く様変わりしてしまって、新たなファン層の獲得につながると思う。

 源氏物語の場合は、こういった点がないので、残念で、手を変え、品を変えて、一般大衆の好奇心を満足させるのに一苦労というのが実情だろう。

コメント

トラックバック