仏伝図の意義 降誕会に寄せて2009/04/08 23:55

今日はお釈迦様が誕生された日にあたる。
 正しくは旧暦であるが、最近では、新暦でお祭りが行われるようである。

 降誕会は活発に行われるが、それ以外の仏伝に関する行事は、それ程、多くはない。

 それよりも、日本には、絵因果教(図)以外に本格的な仏伝に関する絵巻ものは少ない。図では、十歳になった釈迦が超能力を発揮して七つの鉄鼓を射抜くところであるが、成人されるまでの釈迦は、こんな風にスーパーマンとして描かれる。

 しかし、この絵因果経で最も力を入れているのは、釈尊が覚りを得られるまでの過程であり、これについては、かなり、史実風に語られて、絵画化されている。
 
 絵因果経は、日本最古の絵巻物ともされており、私も、卒論のテーマにこちらを選ぼうかと思った程であるが、これが、「絵巻物」であると断定するには異論もあるので、結局、見送った。

 インドでも、仏像が登場する以前から、サーンチーの仏塔の装飾にも仏伝が描かれており、仏伝の方が、実は、仏像の歴史よりも古いのである。その後、初期の仏像が登場しても、その装飾部分には、仏伝のモチーフが描かれている。しかし、これらもやがて簡素化して、姿を消していく。

 絵因果経は過去現在因果経を図示するという目的から絵画化が図られたものであり、初期仏教遺跡に描かれた仏伝図とは性格は異なるものの、その主題は、類似せざるを得ないものである。

 初期の仏教は、釈迦の直接の教え(詩句に表現された仏の教え)や釈迦の生涯を俯瞰し、覚りを得ることの人生における意義に重点を置いていた。

 大乗仏教が進展するにつれて、こうした部分よりも、仏そのものの、威光や威力に信仰の中心が移っていったので、仏伝を描く必要性は薄れていったのではないのだろうか。

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