スクロヴァチェフキーのベートーヴェン ― 2007/02/13 21:33

ドミトリー・スクロヴァチェフスキーとザール・ブリュッケン交響楽団が2年越しで録音を続けていたベートーヴェン交響曲全集がついに完成した。
PCM放送で特集が組まれていたので、パソコンにPCM録音して、それをDVDのISOデータとして焼き込んだものをバッファローのネットメディアプレイヤーで再生されているのを聞いている。ベートーヴェンのシンフォニー全曲がDVD1枚に収まってしまう時代に生きている幸せを感じる。
丸一日再生を続けて全曲を聴き通してしまった。つまり、全曲を続けて聴いても苦痛にならないと言った演奏と言うか、あっさりしていてしかも、細かく聞けばスコアの独自のアレンジ等もあり、興味深く聞ける。
演奏の特長はとにかく管弦のバランスが良く、細部まで見通せる。また、劇性の強い部分でも常に冷静に分析的に演奏されるが、暖かさは決して失われていない。
スコアの特長としては、あのアバドが第9の録音でみせた様な細かな改変が聞かれる事である。特に木管楽器がワインガルトナー版には聞かれない動きをする。かと言って、ジンマン指揮チューリッヒトーンハーレ響の全集の様なベーレンライター原典版とは、版が異なる様だ。独自に手書き草稿等を研究してスコアを改変したのかは判らない。
交響曲第3番「英雄」の第1楽章のコーダのトランペットの部分は、ピストンが発達していない19世紀初頭の金管楽器の演奏を再現している。つまり、後半の旋律をトランペットは奏する事なしに木管楽器に引き継がれる。やはり、この部分は物足りない。
モダンオーケストラによる標準的な演奏であり、運弓等も普通であり、音は、マルカートの部分はしっかり切っているが、ノンビブラートのピリオド楽器風演奏(ジンマンの様な)ではない。
しかし、数多録音されているベートーヴェン全集で巨匠の個性的な演奏が多く残されている中で、独自の存在価値を発揮し続けるかは残念ながら難しいと言わねばならない。
同じコンビのブルックナー全集でみせた個性は、ここでは、残念ながら聞かれない。
地味好みの「通」の人向きの演奏だと思う。録音は、ワンポイント収録では、なくて、弦楽器セクションに2~3本、金管楽器にもいくつかマイクを立てての演奏だが、音場感、透明度は、十分、最新録音の水準に達している。
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