ウェブが創る新しい郷土~地域情報化のすすめ2007/02/23 09:14

販売価格700円は新書にしては高いと思う。

『ウェブが創る新しい郷土~地域情報化のすすめ』(丸田一著 講談社現代新書)

また、地域おこし関連の本を読んだ。

これは、前回取りあげたテーマ(地域社会衰退からどうしたら立ち直れるか)と同じテーマに違った観点から取り組まれている。

著者丸田一氏は、1960年生まれ、早稲田の理工出身であり、理科畑の人である。同年代の人である事、どちらかと言えば、理科系の思考パターン等に共感出来る。

丸田氏は、地域衰退の要因を日常の消費活動の場が失われたと言う点に限局している点がユニークである。

人口3000人のコミュニティーで日常の購買需要を満たす商業施設に要求される、徒歩10分以内の距離に店舗面積は、約3千平方メートルが必要であるとされている。これは、平面に直すと約55メートル四方の面積であり、結構、大きなスペースである。

私が居住している地域では、1つの街区だけで恐らく1万人以上は居住しているが、徒歩10分圏内にある店舗は、面積にして20メートル四方もなく、しかも、多くの店舗がシャッターを閉じており、閑散としている。

この問題を丸田氏は指摘している。つまり、地域内で居住している人達が商店を経営すると言う事は、地域の購買力に拠って得た利益を再び地域内での買い物に利用する事でお金が循環する事が、商店街を支えていると言う。

つまり、「所得循環」が地域内で行われている事は、経済的なソーシャルキャピタルが維持され続ける事になる。

ところが、本社が東京にある大手チェーンストアが進出した場合には、地域内の販売で得た利益を東京の本社に吸い上げられてしまう。つまり、所得収奪と言う現象が発生する。

地域が衰退する原因は、ただ単に大型店舗との安売り競争の負けると言うだけでは、なくて、こうした所得循環の場が奪われた事による。

ソーシャルキャピタルが失われつづけると、若年人口の地域外進出が起こり、更に衰退化する。こうして、現在の状況を産み出された。

2007年問題の出現と特に問題となっている高齢者の生活の場と子供達の教育の場の必要性から地域衰退を食い止める必要性を感じる住民が増えて来た。

こうした問題点を解決するのが、地域情報化と言う事だが、WEB2.0、地域SNS等の情報戦略であると丸田氏は主張されている。た

たしかに地域のアイデンティティや核家族間のコミュニケーション等のメリットはあるが、果たして地域内所得循環に変わるだけの地域社会を支える核になり得るかは疑問だと思う。

まぁ、『地域再生の条件』よりは、客観的データによる図表分析が行われ、しかも地域再生プロジェクトにかかわる人達の生の姿が描かれ、面白く、共感を得たところもあった。