地域再生の条件2007/02/19 23:32


『地域再生の条件』本間義人著(岩波新書2007年1月19日第1刷発行)

 久しぶりに真面目な本を読んだ。

  本間氏による『地域再生の条件』は、北海道夕張市の再建が問題になる中で、実にタイムリーな本である。
 この本の大きな特色としては、現在の地方財政の破綻や地域格差は、結局、小泉内閣による市場競争の原理を地域経済・行政の中にも導入し、国からの財政援助を減らすという政策の結果、産み出された事を明記している点である。
  この本の第1章「なぜ、地域再生なのか」、地域行政のあり方の見直しの必要性を訴えている。第2章「人権が保証された地域をつくる」では、地域住民の1人1人の生活権が守られる事が地域を支える第1歩になる事を示している。第3章から第5章までは、地域再生のプランと実践の実例を示している。生活環境・経済面でも持続可能な社会を再構築する必要性、地域産業の新たな振興とブランドの創生、地域の資源と環境を活かす等が主な内容である。第6章「住民の意思で地域をつくる。」、第7章地域再生に向けて(国の再生策で地域再生は可能か)と言った内容構成となっている。
 この本で最も興味が持たれたのは、第6章及び第7章である。
 第3章から第5章は、正直言って退屈な内容。
  地域再生活動に携わった住民・生活者の生の姿が全く描かれていないのである。
  第6章と第7章は、中には鋭い指摘がされているが、むしろ、この指摘・論点を出発点にして、一層、批判・実証的に事例分析を行って欲しかった。例えば、「住民の意思で地域をつくる。」とあるが、実際には、冒頭に指摘した様に公共政策として実現するとなれば、「条例」として制定する必要がある訳だが、「条例」制定は、民主主義の多数決の原則の元、例え、反対者が居ても、押し切られて、条例として制定されてしまえば、嫌でもその条例に従わざるを得ない。
 従って、「住民の意思で地域をつくる事」が「住民を新たな条例で束縛する」といった状況を産み出しかねないのである。
  この書物では、著者が公共政策的側面に固執されたあまり、ついに住民の自主性を活かした活動プランを「著者の考えで」提示し得ていない。
 テーマの選定・問題点の指摘・事例の選定等良い面もあるが、応用社会学を学ぶものとしては、今ひとつ期待はずれの内容となっている。

注)このブログの読者から内容がわかりにくいとのご指摘を受けましたので、無駄な部分を削除させていただきました。少しは、判りやすくなりましたでしょうか。