最近話題のIPADに関連する調査記事2010/09/29 10:17

 佛大の応用社会学科でお世話になった天野昭先生は、ニューメディアという雑誌を刊行されている。

 僕も何回か見本を取り寄せたり、同社で発行されている単行本を買ったりしたが、購読料が○○○なので、定期購読は遠慮させていただいている。

 最近になって無料の誌面内容紹介が掲載される様になり、記事全文が読める。

 これは、最近話題のIPADに関連する調査記事である。

http://www.newww-media.co.jp/backnumber/201009/nm201009_84.pdf

Q1 日本でIPADが普及するか否か

 全体の51%が普及しない。20%が2015年以降に普及すると回答している。2015年にIPADが商品として継続して販売されているのかが疑問であるが、IPADが日本のメディア文化に定着するか否かということなのだが、どんなもんだろう。

 ただ単に普及しないという場合と、シャープ等が事業展開しつつあるガラパゴスとか中国製の類似商品を含めると、どうなるか。

 あるいは、IPHONE等も画面が小さいが、同一機能なので、こちらにユーザーが流れるということか。

 私には、どうも日本人は、大きなサイズの端末を携帯するのは、苦手な気がする。欧米人と手の大きさが違うし、通勤とか交通手段も大分違うので。

Q2 IPADが普及した場合に最も利用される分野は。

 ネット検索が43%でダントツ。しかし、携帯でもネット検索出来るし、第2位の電子書籍やチラシ(29%)ということになるが、これも果たして、紙の雑誌等と比べて便益性はどうかという点になる。映像視聴は、16%だが、たしかに大画面だが、個人で鑑賞するのに電車の中では恥ずかしい。個人的には、PSP程度の画面で十分である。

Q3.IAD広告は、テレビ広告の脅威になるか。

 脅威にならないが、41%となっている。でも脅威になるが、35%もいる。IAD広告のテレビ広告に比べて優位なのは、ダイレクトオーダーにつなげられる点である。この点は、たしかにスポンサーにとっては有利だが、その様な決済機能を持つ端末を持ち歩くことが普及するだろうか。また、TVメディア広告は、ダイレクトオーダーを狙ったものもあるが、大抵がイメージ広告、あるいは、単に情報の宣伝を目的としたもので、これは、商品の知名度を挙げる為が目的なので、質的な違いがみられる。

知名度アップ   :TVが有利
ダイレクトオーダー:iADが有利

ということになるか。

Q4.IPADの電子書籍が紙媒体にダメージを与えるか。

 ダメージを受けるが、全体の43%、相乗効果が期待出来るが、43%となっている。つまり引き分けだが、既存の全てのメディアがIPADで置き換えられるかという点である。

 例えば、マイクロソフト社のエンカルタ総合百科や平凡社が電子百科事典を発売され、一般に普及する12~13年前位までは、ジャンルジャポニカとか世界大百科とか、そういった百科事典や大部の全集が書店から販売されていたが、今では、国語辞典とか、辞書、特殊な辞典類を除いて、百科事典は、みかけなくなった。

 これは、検索機能という点で、百科事典よりも電子データベースが有利であった為。辞書類もやはり,影響を受けているが、鑑賞や知識の習得を目的とした書籍については、引き続き販売され続けている。

 「家庭から本棚が消える日」ということになるが、本棚がある家は、ステータスであると私は考えている。また、幼い時に祖父に買ってもらった絵本が最近出てきたが、保存が良かったので、当時の印刷の匂いがまだ残っていた。こんな風に書籍には、折節の想い出があるので、簡単にはなくならないと思う。

 IPADに「想い出」を込めることが出来るだろうか。僅か1~2年が商品寿命の電子メディアには、その様なことを期待するのは不可能である。

 IPADの欠陥としては、PCに比べてビジネス文書の作成は不便。また、電子書籍としては、キンドル等の方が優れている。

 中国製の類似商品には、折りたたみ式キーボード付きのものも出てきているが、やはり、利用者は、この方を選ぶという考え方になるからか。

 IPADは所詮、ファッションだと定義づけると、どうだろうか。それでもデジタル音楽プレイヤーIPODの奇跡的なシェアを考えると、ファッション的な奇跡が起きる可能性も棄てきれない。

 しかし、IPODの奇跡を引き起こしたのは、ITUNEとの連携機能である。.ITUNEを通じて、音楽情報が提供され、そのデータベースは驚く程で、クラシック音楽のマイナーレーベルのカバーアートでさえもデータとしてダウンロードされ、ジャケットを音楽を聴きながら楽しむことも出来る。ポッドキャストとの連携も楽しい。

 IPADでは、今後、どの様な情報提供サービスが行われるだろうか。その情報の量と質で、この商品の普及度が違ってくる様な気がしてならない。

 ニューメディア誌面では、テレビとIPADとの比較論もされているが、テレビというメディア自体が既に行き詰まりとなってきている。もし、アナログ放送廃止後は、更に、この傾向が強まるだろう。

 つまり、全国画一型の一方通行による情報提供の形が既に時代遅れになっている。

 デジタル化で、個別の端末の管理と掌握が可能になったので、オンデマンドの番組配信がテレビで可能になる可能性もあるが、NHKの様にオンデマンドは、PCでの配信という様に棲み分けの方向に進みつつある。

 テレビのデジタル化により、ブロードキャスティングのユニバーサルサービス機能によるメリットの一部が喪失されてしまうので、一層、テレビは不利になるだろう。

 ラジオ放送でもアナログFM放送の視聴率は年々低下しており、放送自体の維持が困難になっている。一方で、インターネットラジオは急速に普及している。日本の場合は、法的規制でラジオ局がインターネット放送に切り換えることは難しいが、広域無線LANサービスが、ソーシャルメディア配信網として整備されれば、電波放送自体が意義を失う日がやってくる可能性もある。

 テレビの優位性、それは、大画面である。だから、32インチ以上の液晶テレビが買えない若年の低所得者階層では、テレビを持っておらず、携帯のワンセグで十分という人が増えており、地デジ化で一層、この傾向が顕著になる。

 小画面での鑑賞では、ワンセグで十分である。IPADが大画面化された訳は、この点があると思う。IPADの画面の大きさでは、ワンセグでは、画面の粗さが目立ってくるから、もっとクオリティの高い画面を鑑賞したいというユーザー層を狙っている。

 日本国内で、地デジではなく、高速インターネット経由でのデジタルテレビ放送が普及したら、状況は、一変、IPADが普及するだろう。

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