中古住宅購入と役割期待2010/08/24 22:18

 
 中古住宅を買う時に注意しなければならないのは、以前にどの様な人が居住して、地域社会においてどの様な役割期待を果たしていたかということである。

 オーナーが賃貸に出していた場合もあり、私の家もそうだが、借家人とオーナーの二重の役割期待を、そういった家を買った場合には、そのまま引き受ける羽目になる。

 「負の役割期待」が課せられていた場合は厄介だ。

 前のオーナーが地域社会から敵視されていたり、実際にその様にみられても仕方がないことをしていても、買った本人とは、関係がないと言っても、そうは行かないのが、地域社会の怖いところである。

 つまり、前のオーナーに着せられたラベリングと役割をそのまま背負い込む形になる。

 新しくこの家を買った人間にとっては、青天霹靂だが、隣人に取っては、当然のことになる。

 従って、中古住宅の購入者は相当の負担を受けることになる。
 それは、ショック症状に似た位、凄まじいものである。

 今後、どんどん中古住宅の流通が増えてくると思われるが、不動産の資産価値にのみ関心が向きがちで、その家が、その地域でどの様な社会的な位置づけがされていたかについての調査・検証は皆無である。

 しかし、実際に生活してみると、家の状態よりも、そういった地域社会が、新たな住人をどの様な目でみられるかが重要になる。

 これが実は、家の状態とか坪数とか景観とかそういったことよりもずっと重要なのである。

 だから、中古住宅に住む場合には、思い切ってリフォーム、あるいは、再建築をすべきである。
 
 徹底的に以前の住民のイメージを破壊して、新しい色で塗り替えるべきである。

 イエのイメージが変わってしまうことで、前の住人に被されていたラベリングや役割期待をある程度、払拭することが出来る。

 だから、僕は、玄関のドアをウルトラマリンで塗装したのである。

 自分の様な人間が悲惨で、前の状態のままの家で住んでいたら、以前の住民と同じ色眼鏡で見られかねない。

 特に、どうして、こんなに状態や環境の良い住宅が安い値段で売られているかという点で見過ごされがちなのが、自殺、心中とかそういった問題ではなくて、先住者がかって受けていたラベリングなのである。

 ラベリングと役割負担に耐えきれずに家を手放す場合もある訳だ。

 つまり住みにくいイエというのは、家の状態だけではなくて、近隣との関係も含まれてくることになる。

 やむを得ず、中古住宅を購入してそのまま住む場合には、やはり、近所を回ってそういった点まで聞き取り調査することが必要だが、それが、難しいのである。

 不動産取引の場合は、自殺とか心中とか重要な問題については、告知しなければならないが、近隣との関係の良否等については、報告義務がない。

 本来は、ここまで不動産屋は、すべきなのである。

 こうした点を考えると、家は、新築の方が良いということになる。そうなれば、近隣との関係が悪くなってもそれは、本人の責任ということになる。

 マンションの場合は、それぞれの家にそれ程、特色はないが、一戸建ての家は家の景観=住人の人格・個性と同一視されてしまうという危険を孕んでいる。

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